忍者ブログ

レイアース二次小説置き場 (Last One)

「魔法騎士レイアース」クレフ中心の長編小説を置いてます。

2020.01.19
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2013.01.03
年末に短期的に募集していた企画ものです。参加いただいた方、ありがとうございます。

ちなみに選択肢はこちらでした(笑)
この中から、リクエストが多かったものをいくつかピックアップ済です。
どれをピックアップしていたかは完結後にお知らせします。
いくつか危険なのがありますね~。。
 1. 砂糖吐きます! 甘々展開
 2. 彼を盗らないで! ドロドロ展開
 3. コーヒーも恋愛も微糖がお好き
 4. 青春の汗的サワヤカ恋愛
 5. 恋愛なんていらないぜ
 6. むしろレイアースで大人な恋が見てみたい
 7. 禁断の……男×男 or 女×女
 8. 恋愛っていうかむしろお笑い

※備考
原作ではなく、アニメの展開を引き継いでいます。

本文は「つづきはこちら」からどうぞ。

――――――――――――――――

信号が赤から青に切り変わり、私は交差点に足を踏み出した。

ダークブラウンのシンプルな革のコートに、象牙色のニーハイブーツ。肩には、黒くて小さなバッグ。今日の私のコーディネートで、ふんわりとした柔らかいものは、首にかけた淡いピンク色のマフラーだけだ。

ぴゅうっ、と風が吹き抜けて、私は首をマフラーの中に引っ込めた。季節は1月、この東京も、一年で一番寒い季節に差しかかっている。東京の風は本当に乾いていて冷たくて、隙間のどこからでも侵入してきて鳥肌を立たせる。クリスマスと年末、新年の立て続けの盛り上がりが終わって、ちょっと気が抜けたような―― でも気が引き締まるこの感覚は、私はけっこう好きだった。

横断歩道を渡り終えたところで、いきなり声をかけられた。
「あの、そこの君。すごく目立ってるの、自分で分からない? 何歳かな?」
腕を掴まれたから、知らない振りもできずに振り返った。またテレビ局のディレクターか、はたまたどこかの芸能事務所のスタッフか、もしくはキャバクラの勧誘か―― と思いながら。

振り返った先にいたのは、黒いロングコートに身を包み、髪は少し茶髪にパーマをかけた、それこそテレビに出てきそうな「業界人」だった。
「……21歳よ」
別に隠すことでもなく口にすると、男はオーバーに驚いて見せた。
「まだ十分間に合うよ! テレビに出たりとか、興味ある? 君だったらモデルにでも、女優にでも――」
「興味ありません」
きっぱりばっさり切り捨てる。その時私は、赤になりかけの横断歩道を駆けて来る小柄な女の子に気がついた。
「あ! 光!」
手を振ると、息を切らしたその子は、私の顔を見てぱーっと笑った。
「海ちゃん! よかった、間に合った!」
「何言ってるのよ、時間ぴったりよ」
腕時計を指差して笑うと、光が子犬のようにぴょんと飛んで、すぐ近くにやってきた。私は、声をかけてきた胡散臭い男に男を見上げて、にっこりと笑った。
「連れが来たので、私はこれで」
こういう時の私の笑い方には定評がある。合っているのかはとにかく、典型的な「クールビューティー」だと言われる。綺麗だけど、間違っても反論したりとか、呼びとめたりとかできなさそうな迫力があると。願ったりかなったりだと思う。
黙ってしまった男を置いて、私は光の腕を取り、踵を返した。


**


光は、襟の大きい個性的なデザインの真っ赤なコートを着ていた。ショートパンツから、黒のタイツが覗いている。寒そうな格好も、元気印の光だとよく似合っていた。
「すごいね海ちゃん、今のまたスカウト? そういうの、興味ないの?」
光は、残して来た男をちらちらと振り返りながらそう言った。21歳になっても純朴なこの子のことだ、「話の途中だったのかな、置いてきてよかったのかな」とか思っているに違いないのだ。私はひらひらと手を振った。
「全然そんな気、ないわよ。一度、スカウトの人が家まで押しかけてきちゃって、パパが出てきて大変だったのよ。『僕の大事な海が、不特定多数の人間にじろじろ見られるなんて許せない! お嫁に行けなくなったらどう責任取ってくれるんだ!』なんて怒りだしたりして。意味が分かんないんでしょ」
そこまで言って、慌てて言葉を切った。光にお父さんがいないのは知っているから、父親の話をするのは、なるべく避けていたのだ。思わず光をじっと見ると、光はなぜか慌てた顔をした。
「ごっ、ごめん海ちゃん、もしかして私、匂う?」
「匂うって……なにが?」
私は思わず、光に顔を近づけてくんくんと匂いを嗅いだ。乾きたてのシーツみたいに、太陽の匂いがした。光は、犬の耳があったら下に伏せられているだろうと思うような表情で、上目遣いに私を見上げてきた。
「犬の匂いがしないかなと思って。今、ドッグトレーニングの学校の帰りだから。私、自分じゃもう分からなくて」
「全然しないわよ。というか、してもかまわないけど。光らしくて、かわいい格好だなって思ってたのよ」
光は高校を卒業した後、ドッグトレーナーを目指して専門学校に入学した。もともと、ずっとたいせつに飼っていた「閃光」という名前の犬が、高齢になって介護が必要になって、その介護方法を教えてもらえないかと思ったのがきっかけだったらしい。高校生のころから専門学校に出入りするようになり、その熱意に打たれた先生から、本格的にうちで学んでみないかと薦められたということだ。今では、犬と人間がより幸せに暮らせるようにしたい、と元気な顔で言うようになっている。昔からなぜか動物の言葉を理解していた、光にぴったりの進路だと思う。

「よかった!」
光はにっこりと笑って、自分の格好を見下ろした。そういえば、光の服装は、年が離れた兄が決めていると聞いたことがある。どうりで服装に割と無頓着な光が、その割に可愛さを最大限に引き立てる格好をしているはずだ、と聞いた時納得した。光の話を聞いているだけで、兄達がどれほど光を溺愛しているか分かって若干引くことさえあるが、兄おそるべし、である。

**

「ええと。海ちゃんお勧めのカフェって、このあたりだったっけ」
「私も行くの初めてなの。ものすごく腕がいいショコラティエがいて、おまけにすごく美形なんだって」
普段は、自分で確かめてからお店を決めるのに、珍しいことではあった。何人も何人も、海の周囲の人たちが力説するから、そこまで言うならちょっとのぞいてみようか、という気になったのだ。もっとも、甘いケーキは食べるのは苦手だけど作るのは好きだから、次の創作ケーキのヒントにしたい、と思ったのも理由のひとつだ。
「ええと、ここね」
私は、流れるように品のいいアルファベットが刻まれた、看板を見上げた。
「ちょこらと?」
「Chocolat。フランス語で"ショコラ"よ」
「へえ! ショコラってフランス語だったんだね!」
感心した光が、ドアを開けた。カラン、とカウベルの音がして、扉が軽やかに開く。暖かな空気が室内から流れ込んできて、私たちは慌ててドアを閉めた。

甘いケーキが目当てなのか、それとも美形のショコラティエが目当てなのか、お店の全ての席は、女の子たちでいっぱいになっていた。華やかな話し声が、どこの席からも聞こえる。
大きく取られた窓の傍には、小さなアンティークな装飾が施された、ガス灯が置かれていた。窓際の席には、全てブランケットが掛けられている。窓際の一番奥の席から、風が手を振るのが見えた。
「久し振りだね、風ちゃん! 元気だった?」
「ええ。光さんも、海さんも、お元気そうでなによりですわ」
風はおっとりとした笑みを浮かべた。眼鏡をコンタクトレンズに変え、髪を少し伸ばした以外は、初めて会った時と変わっていない。その華奢な手が重そうに閉じた本に、私の目は吸い寄せられた。
「なに、これ……法律の本? しかも英語?」
「大学を卒業したら、大学院に留学しようと思っていますの」
さらりと言った風に、私たちは一瞬ぽかんとする。
「やっぱり、海外で弁護士を目指すのか? すごいね」
「確かに風、あなた外見の割に押しが強くて、口もうまいけれど……本当に、海外に行っちゃうの?」
「先のことは、分かりませんけれど」
そう言って風はおっとりと笑うが、風が一旦決めたことは実現させる性格だということを、私はよく知っている。留学するといえばするだろうし、弁護士になると言えばなるだろう。風の育った家を考えれば、大学を卒業した後に就職せずに家で過ごして、そのあと、お金持ちの旦那様を持って専業主婦になる、そんな優雅な将来が当然のように準備されていると思うのに。敢えて、そんな家から飛び出そうとする風を、頑固ですがすがしくて、いかにも風らしいと思ったりする。

コートをウェイターに預け、席につきながら、私はなんとなく、心が落ち込むのを感じていた。風がお店を見渡して、笑顔で言った。
「ここは、海さんが選んでくださったんですね。最近人気だと私もお友達から伺いましたわ。本当に素敵ですのね」
「うん。大学の友達とかママとか、最近婚約した人とか、みんながいいって言うし、来てみたかったの」
「そうなんですのね」
「そうなんだ……って、婚約!?」
二人の叫び声が店内に響き渡り、周りの人の注目を浴びて、三人とも赤くなる。
「ちょっと光、風! そんなリアクションしなくたって」
心なしかテーブルの上に身をかがめ、小声で二人に抗議する。
「こ、婚約したの? 海ちゃん!!」
「ええ」
「どんな方なんですの?」
そう聞かれて、うーん、と唸った。
「うぅん……普通に、いい人よ」
カクン、と二人が同時に肩を落とした。

「……もしかして、お見合いで出会われたんですか?」
「よく分かったわね風、そうなのよ。パパの取引先の会社の人で、フランス人。日本語も英語もペラペラで、身長が高くて。ちょっと可愛い顔立ちだけど、ハンサムだし性格もいいし」
「非の打ちどころのない方じゃないですか」
「そうよね、確かにそうなの」
風と私の顔を、きょろきょろと交互に顔を見ながら聞き入っていた光が、ぽつりと言った。
「でもなんか海ちゃん、あんまり嬉しくなさそう……って、ごめん!」
「いいのよ」慌てて謝った光に、私は首を振った。「その通りだもの。まだ、ピンと来てないだけかも」

世の中の「いい要素」をこれでもかと詰め込んだ、極上フレンチのフルコースみたいな人。完璧な人を探して来た、という自信たっぷりの父親の言葉は確かにその通りで、私は初めて会った時、正直感心したものだ。世の中に、こんな人がいるのかと。でも、それと「好きになる」という感覚はまた別のものだった。お見合いの後、断りはしないけど、乗り気でもなかった私に対して、パパは、
「それなら、どんな相手が海の好みなんだ? パパが絶対に探し出してやるぞ!」
とこれまた自信満々で言い切った。困ったのは私だった。言われてみれば、「こんな人がタイプだ」と、はっきり言い切ることができないのだ。身長が高いか低いかと言われれば高い方がいいし、性格が明るいか暗いかと言われれば明るい方がいいし、仕事ができないかできるかといえばできるほうがいい。という風に積み重ねていくと、やっぱりあのお見合い相手に行きつくのだった。でも正直言って、それはどれも「そりゃそうよね」と誰もがいうような普遍的な要素であって、私自身が本気でそう思っているかと言うと自信がない。

煮え切らない態度の私とは対照的に、相手の反応ははっきりしていた。ぜひ結婚したい、すぐに結婚が無理なら、婚約だけでもしたいと仲介人を通して申し込まれたのだ。これ以上ないくらいの"Yes"だった。相手が、あまりに喜んでくれるから。そして両親も、すばらしい縁談だと心から嬉しそうだから、断るタイミングを逃してしまった。みんなを悲しませてまで"No"と言う気になれなかったのだ。そのうちに話がとんとん拍子に進んで、今に至る。みんなが喜ぶならいいか。そういう気持ちがあったのは、否めない。

考えてみれば、私には、「この人だけが好きだ」とか、「こういう事がやりたい」とか、強く想ったことが一度もない。相手と戦ったり悲しませてまで気持ちを押しとおしたいなんて、全く思わない。だから私と対照的に、自分の道を決めて進んで行く光と風を見ていると、どんどん差が離れて行くような気がして、正直悲しかった。でもいくら焦っても、自分の中に何もないのだから仕方がない。
―― 私、からっぽだわ。
そう気づいた時、ずっと探していた宝箱を開けたら、何も入っていなかったみたいに淋しい思いをした。

「……どうなさいましたの、海さん」
テーブルに肘をついたまま、ぼんやりとしてしまったらしい。我に返ると、風が優しい目で海を見ていた。
「……みんな、やりたいことをどうやって見つけてるのかしら」
ぽろりと、本音が漏れた。
「フェンシングは好きだけど、それを仕事にしようとは思わないわ。お菓子作りも好きだけど、趣味の範囲内だし。バレエは、身長が高くなりすぎて続けられなかったし。私って、何にもないんだなって、嫌になっちゃう」
「一生の職業を決めるような『やりたいこと』を考えると、どうしても重くなってしまいますわ。今までの人生で、小さなことでもいいから、これをやりたいとか、好きだとか、思われたことはありませんでしたか?」
そう聞かれて、しばらく考えた。
「……『セフィーロ』かしら」
ぽつりと呟くと、二人がハッとしたのが分かった。
「セフィーロに二度召喚されて、あの国の再生を見届けて東京に戻って来てから、もう七年になるわ。あれから、一度もまだ、セフィーロに行けたことはないじゃない? ……でも、もう一度行きたいって、今でも思っているわ」
まあ、私たちの間でしか通じないけどね。そう言うと、二人とも笑った。
「何度も、東京タワーに三人で行ったよね」
光の言葉に、当時のことを思い出して私も笑った。
「そう。なんとか、セフィーロにまた行けないかと思いましたわ。でも、無理でしたわね。一瞬、平和になったセフィーロの姿が見えて、それだけでした」
セフィーロの話をすることは、最近少しずつ少なくなってきていた。でも、未だに一番盛り上がる話題だった。そして話すだけ話した後、二人とも最後には切ない顔をする。

光も風も、セフィーロに恋人がいた。その名前を、自分からは固く口に出さないことから、逆に思いの深さが伝わって来て、私も苦しいくらいだった。二人とも魅力的だから、男性からの声は絶えないらしいのに、それでも恋人ができたという話を一切聞かないのは、そのためだと私は思っている。

―― 私は、セフィーロに恋人がいなくて、今にして思えば幸せだったのかしら?
分からない。もう少しセフィーロにいたら、「何か」が生まれていたかもしれない。でも私は駄目ね、と心の中で首を横に振る。私は、告白すらできなかったのだから。咲くかもしれなかった小さな蕾のまま、摘み取られてしまった想い。あの時の「ありがとう」という彼からの言葉の意味を、私は未だに知らずにいるのだ。

彼と、初めて出会った時のことを考えると、どうしても私は苦笑いしてしまう。
私のせいで、最悪だったと言ってよかった。でも、二度目に再会した時、分かり合うことができた。三度目に会えたら……? どうだったのだろうか。答えはずっと七年もの間、お預けになっている。
「クレフ、またあの杖で、誰かをゴツンとやってなきゃいいけど」
ほとんど無意識で、彼の名前を口にした、その時だった。
「……クレフ?」
急に、背後で男性の声が聞こえた。高すぎも、低すぎもしない声だった。反射的に振り返り、私は叫び声を上げた。

無理もないと思う。真っ白なシャツに、黒のロング丈のギャルソンエプロンをびしりと身に付けたその男性は、クレフにそっくりだったのだから。

2 につづく

拍手[19回]

PR
Post your Comment
Name
Title
Mail
URL
Select Color
Comment
pass  emoji Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
  BackHOME : Next 
ブログ内検索
忍者アナライズ

レイアース二次小説置き場 (Last One) wrote all articles.
Powered by Ninja.blog / TemplateDesign by TMP  

忍者ブログ[PR]