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レイアース二次小説置き場 (Last One)

「魔法騎士レイアース」クレフ中心の長編小説を置いてます。

2020.01.20
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2013.01.22
「おねがい。一人にして。」

本文は「つづきはこちら」からどうぞ。

――――――――――――――

――「ランティス……ランティス! ヒカル!!」
イーグルは、何度も何度も心の中で二人に呼びかけた。しかし、いくら集中しても、ふたりの「心」は全く反応しなかった。確かに感じていた気配も、もう感じない。瞼の裏には、スクリーンに映し出した映像のようにクリアに、二人が落ちた崖の映像が浮かんでいた。幅数十メートルにも渡って岩が崩れ、ざっくりと大地が割れていた。割れ目の奥は真っ暗な闇となっていて、その深さは全くうかがい知れない。こんなところから落ちたら、助かるとは到底思えなかった。二人が応じない理由、そんなものは分かりたくもなかった。

悔しかった。これほどはっきりと見えるのに、その場に自分がいないということが、もどかしかった。もし自分がいたら、なんとかして二人を助けるために手を尽くすのに―― 見えるだけで、何もできないことがこれほど辛いとは、力を持つまで分からなかったことだった。

何か、助ける手段はないか。イーグルの視界は、そこでぐんと高くなった。そして、上空からその場を見下ろした。すると、地上に残った三人の姿が、くっきりと閉じた瞼の裏に映し出された。ザガート、アルシオーネ……そして。
――「導師クレフ……」
彼が自分の知る「導師クレフ」である手掛かりを、なんとか探し出そうとした。でも、無駄なあがきだと自分でも思った。ランティスと光が彼の魔法によって崖下に突き落とされるのを、目の当たりにしたばかりなのだ。真実を把握するためには、先入観や感情が邪魔になることもあると、軍人である彼はよく知っていた。知っていて尚、目の前で起こっていることが信じられなかった。

イーグルが唇を噛んだ時だった。不意に、クレフがキッと上空を見上げた。その透明な眼差しが、まっすぐに中空から見下ろしていたイーグルとぶつかった。それに気づいたイーグルは、心底驚いた。セフィーロから「視て」いるイーグルの存在に気づいているのか。それならば、話しかけることができるかもしれない。イーグルがそう思った時、クレフは右手で、その場の空気を払うような仕草をした。それと同時に、イーグルの視界は一瞬のうちに闇に閉ざされた。


***


「イーグル……イーグル!!」
肩を揺すられて呼びかけられ、はっ、とイーグルは目を見開いた。海の病室で目を閉じてから再び目を開けるまで、一体どれくらいの時間が経っているのか、自分でも分からなかった。窓の外は、真っ暗になっている。まるで悪夢を見た後のように、全身にびっしょりと汗がにじみ出ていた。
「どうしたんだよ。声かけても全然目を開けないし、また眠っちゃったのかと心配したぞ!」
イーグルの肩から手を離してそう言ったのは、ザズだった。その後ろにはフェリオの姿もある。イーグルは、いつ二人が部屋に入ってきたのかも気づかなかった。大丈夫ですよ、といつものように笑顔で返そうとしたが、喉の奥に何かが詰ったように重く、言葉がでてこない。どっと全身に疲れがこみ上げ、イーグルはそのままうなだれた。

「どうしたの? イーグル。大丈夫?」
さらりと青色の髪が視界に落ちた。見上げると、海が心配そうな顔で、イーグルを覗き込んでいた。その顔を見返して、イーグルはますます何も言えなくなった。たった今目にしたことを口にすれば、この娘はまた泣くだろう。
「……何か、あったのね」
イーグルの表情を見て、プレセアが優しげな眉を寄せた。

今しがた「視た」ことをどう伝えればいいのか、頭の中でまとめるには、さすがのイーグルも混乱していた。海とプレセアを見て、このまま何も言わなくてもいいなら、どれほどいいかと思った。しかし、そんなことができるはずもなかった。チゼータで視た映像が「現実」そのものだということは、間違いない。今目を逸らしたところで、現実からは逃げられない。
「……チゼータで起こったことを、『視て』いました」
「……なんですって?」
プレセアが顔を上げ、アスコットを視線を合わせた。
「このセフィーロから、遠く離れたチゼータを『透視』したっていうの? そんなこと、魔導師でもそうそうできることじゃないはずなのに」
「……導師クレフに、魔法を伝承いただいたからでしょう。きっと、師がよかったんでしょうね」
微笑んだつもりだったが、うまく笑えたか自信がない。イーグルは掌をそっと胸に当てた。クレフが手を当てた時のぬくもりが、まだ残っているような気がした。「親子が争うところは見たくない」そう言って微笑んだクレフの真心は決して疑えないのに、一日で全てがあまりに変わってしまった。

そこまで考えて、イーグルはふと思い立った。あの時クレフが使った『魔法伝承』が力を分け与える行為だとすれば、イーグルもクレフの教え子に含まれてもおかしくない。となれば、『禁術』によってイーグルも創りだせるということになってしまうのか。それだけではない。光・海・風の三人も、ランティスもアスコットも、クレフがその気になれば創れるということになる。その者たちが一斉に襲い掛かってきたらどうなるかと思うだけで、ぞっとした。改めて現実を思い知らされ、思わず深いため息が漏れた。


その時、誰かがこちらを凝視しているのを感じた。顔を上げると、向かいの一人掛けのソファーに腰をかけたマスターナの視線とぶつかり、思わずぎくりとした。
「……導師クレフを見たんか」
マスターナはイーグルと視線が合うなり、そう言った。答えを尋ねるような口調ではなかった。この男は、イーグルが何を視たか「知って」いる。イーグルはごくりと唾を飲み込んだ。
「……クレフ?」
その場の全員が、その名前に反応した。真っ先に身を乗り出したのは海だった。
「クレフの行き先が分かったの?」

口を開きかけたが、うまく言葉にならなかった。事実を伝えなければならない、しかし誰も傷つけたくはない。黙っているのに耐えられず、イーグルは目を閉じた。すると、その肩にあたたかい手が置かれた。
「イーグル。どんなことでも聞くから、一人で抱え込むな。一体、何があったんだ」
フェリオだった。表情も、声音も数日前までとは別人のようだった。自由人で楽観的だった以前と比べて、ぐっと責任感のある、上に立つ者の顔になっている。導師クレフが姿を消し、敵の前にさらされた体験が、短期間で彼を変貌させたのだろう。
「……何者かに、操られているのかもしれません。脅迫の可能性もあります。つまり、『彼』の意志ではないかもしれない―― その前提で、話を聞いてください」
イーグルはそう言いながら、祈るような気持ちだった。そうであってほしいという気持ちと、一体誰が導師クレフを操ったり、脅したりすることができるのかという疑念がせめぎ合っていた。
「チゼータで、ランティスとヒカルが攻撃を受け、崖下に飲み込まれるのを見ました。ランティスは重傷を負い、ヒカルは気を失っていました。あの状態では、どうなっているか……楽観を許さない状況でした」
その場の全員の体が強張る気配を、イーグルは感じた。言いながら、祈るような気持ちだった。あの二人が、死ぬはずがない。しかしぎゅっと握りしめた拳は、冷や汗で濡れていた。

「『攻撃』……? いったい、誰が二人を傷つけたのですか?」
風が、イーグルの前に膝をついた。慌ててフェリオがその肩を支えた。座ったというよりも、ふらついて倒れ込んだように見えた。イーグルを見上げた風の顔が、蒼白になっている。
「攻撃したのは……ザガートと、アルシオーネ。ランティス達がそう呼んでいました」
「え?」
海と風が同時に声を上げ、視線を合わせた。海が信じられないように首を振る。
「二人は……もう三年前に、亡くなっているわ」
「『禁術』の話を、知っているでしょう」
自然と、押し殺したような声になった。それに返したのは、言葉を発するのが恐ろしいような沈黙だった。
「……クレフが、『禁術』で二人のコピーを創ったっていうの……」
「その場に現れたのは、間違いなく導師クレフでした」
「待って」
海は両手を、耳を包むように置いた。
「ウミ」
アスコットがその肩に手を置いたのも、気づかないようだった。
「『禁術』で生き返った人は、遣い手の意志に反応するんでしょう? もしもクレフが使ったとしても、攻撃なんかしてくるはずがないわ」
「……操られているのかもしれない、脅されているのかもしれない、と言ったでしょう」
イーグルは無理やり声を押しだした。
「僕は、導師クレフが自ら、二人を攻撃するところを見ました」
「うそ」
海は、反射的にイーグルの肩を掴んだ。その手が、ぶるぶると震えていた。
「なんで、なんでそんなこと言うのよ。あなた、クレフを信じないの?」
「ウミ!」
フェリオが二人の間に割って入ろうとしたが、海はその場に釘付けになったように動かなかった。
「僕は導師クレフを信じています! でも、僕が『視た』ものは事実です」
海の目から、大粒の涙がこぼれ出した。肩を掴んだその華奢な手で、打たれるのをイーグルは覚悟した。それで互いに少しでも楽になれるのであればそうしてくれとさえ思った。しかし海は、全身でガタガタと震えながらも、その手をゆっくりと下ろした。
「ウミ!」
「海さん」
アスコットと風が、ふらりと背中を返した海を見て慌てて立ち上がった。しかし海は、二人に背中を向けたまま、ぽつりと言った。
「おねがい。一人にして。今誰かといたら、その人のこと傷つけてしまうわ。そんなのは嫌なの……」
その消え入りそうな声に、返せる者は誰もいなかった。彼女がこれほどまでに、茫然自失している姿を見るのは、誰もが初めてだったのだろう。バタン、と扉が閉まるのを、全員がやるせない表情で見送ることしかできなかった。

――「導師クレフ」
イーグルは、心の中で呼びかけた。
――「あなたが大切に思い、あなたを大切に思っていた女(ひと)が泣いていますよ。何も、しないんですか……」
涙を止められるのは、一人しかいないと言うのに。クレフが残した言葉が、不意に頭をよぎった。
――「私は、私の存在が他の誰かを恐れさせたり、傷つけたりするのを好まない」
イーグルは唇を噛んだ。

あなたは、確かに僕にそう言った。あの言葉が嘘だったなどとは信じられない。
あなたは確かにあの時、穏やかな表情でそう言っていたではないか。
何よりも愛しいと言っていた教え子に手をかけて、何事もなかったのように、「あんな目」で、僕を――

「――っ」
「イーグル」
さらり、と髪に誰かが触れる気配がした。見上げると、プレセアが優しくその髪を撫でていた。その大きな眼には涙がいっぱいにたまっていたが、泣いてはいなかった。クレフがいなくなった直後はあれほど取り乱していた彼女が落ち着きを見せていることに、意外に思うと同時に、心がわずかでも平静を取り戻した。
「あなたのせいではないのよ、イーグル。辛いことを教えてくれて、ありがとう。ウミは大丈夫よ。あの子は強い子だから」
「……なにか、手掛かりになるようなことはないのか?」
フェリオの問いに、イーグルはしばらく考えた。
「……ランティスが、最後に言っていたんです。『今、分かった』と。それを何か告げようとした時、彼の意識は途切れ、続きは聞けなかったんですが……」
「分かった……って、何をだ?」
イーグルは黙って首を振った。
「何も確証はありません。状況から判断するに、導師クレフに関わる、何か決定的なことだったのでは……としか」

ここで話していても、推測の域をでないのだ。本当なら今すぐにでもFTOを駆り、チゼータに行きたかった。しかし、イーグルにはオートザムとセフィーロの調整役として、オートザムに出向く義務がある。
「オートザムか、ランティスか……」
イーグルは薄らと自嘲した。これでは、三年前と自分は何も成長していない、そう思わずにはいられなかった。


66 につづく

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