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レイアース二次小説置き場 (Last One)

「魔法騎士レイアース」クレフ中心の長編小説を置いてます。

2020.01.24
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2012.10.01
それは遠い、遠い昔の話。

本文は「つづきはこちら」からどうぞ。


――

紅蓮の炎が、その百万の舌をちらちらと揺らせながら地を舐めてゆく。
いくつも地面に転がる黒い物体は、かつてはヒトだったとは信じられない。
死がはびこる台地、阿鼻叫喚の戦乱の中から見上げた空は、
いつもの『セフィーロ』と変わらぬ、透き通るような青。
どんな惨劇より、残酷に見えた。
 
クレフは、長期に渡る戦争に、憔悴しきっていた。
たとえばその時に、剣士が彼に向って剣を振り下ろしたとしても、指一本動かす気になれないほどだった。
 
死ねば地獄。生き残っても地獄。
楽園のはずだった『セフィーロ』を変えたのは、たった一人の『柱』と呼ばれる人物の不在、それだけだった。
―― 一体どうして、『柱』は我らを見捨てたもうたのか?
怨嗟の声が、この地に満ちた。
 
許せない。皆はそう言った。『柱』は『セフィーロ』を何よりも愛するべき。それができないということは、裏切ったのだと。
でもクレフはその時、違和感をもった。この『セフィーロ』で、国を何よりも誰よりも愛せる者が他にいるというのか?
自分にも問うた、その答えは「否」だった。
まだその時のクレフには、何よりも大切に思うヒトがいたからだ。
「国を愛す」と言っても、それはその国の中に、護りたい誰かがいるからだ。
その「誰か」を持つことが、それほど罪深いとはどうしても思えなかった。

でも、現に。たったそれだけの「罪」のために、その時『セフィーロ』は滅びようとしていた。
 
「簡単なことだ」
クレフの師であった女は、周りに死体が満ちていることも、自分の刀が血ぬられていることも気にしないような、せいせいとした口調だった。
「例え『柱』であったとしても、人は神にはなれぬのだよ。できぬことをできるように振舞うのは欺瞞だ。そんなルールでしかこの国が立ち行かないというのなら、遅かれ早かれ滅びる運命からは逃れられん」
クレフはその時、その女を見上げていた。空中に、雲よりも白く、空よりもまばゆい光が現れていた。

光は、定規で引いたかのようなまっすぐな長方形のかたちをしていた。まるで、空に『扉』が現れたかのようだった。
女は、その『扉』の向こう側に立ち、弟子を見下ろしていた。
「その『扉』は……」
疲労のせいなのか、目の前の光景があまりに非現実的なためなのか、状況の理解が遅れた。
「この『扉』を開けられるのは、導師になる見込みのある者のみ。おまえなら開けると思っていた」
言われてようやく、背筋に冷たいものがはしる。女に教えられたことが、頭に蘇った。
「お戻りください! その『扉』の向こうにいけば、あなたは……」

必死で叫ぶクレフを、女は涼しげに微笑んで見下ろした。この期に及んで、スッとした女だと思った。
「この『扉』は、内側からしか閉められぬ! そしてこの『扉』が閉まらねば、『セフィーロ』がどうなるかおまえにも分かっておろう」
「分かっているからこそ……あなたに全てを背負わせたくはないのです!」
 
二人の間に、沈黙が落ちた。女は一瞬、さぐるような目でクレフを見た。
クレフも見返した。ふっ、と女が微笑む。
「では。時の深淵のかなたで、ふたたび会おうぞ」
ひょいっ、と女は一歩引いた。そして、右手をさっと払ったように見えた。とたんに『扉』は掻き消えた。
 
 「……あ」
後になっても思う。どうしてあの時、自分は這ってでも、女の足を掴んででも彼女を止めなかったのかと。
結局、クレフには分かっていたのだ。あの『扉』を閉めなければ、『セフィーロ』は滅びる。

そして、一旦開いてしまった扉を閉めるには、現役の導師が内側から閉めるほかない。
さらに、女はもう永く「導師」として生き、自分は今まさに、「導師」となる資格を手にした。
それらを鑑みたクレフはその時、師である女を助けようとは、ほんとうに思っていなかったのだ。
女と、女以外のこの世のすべてを、秤にかけた。結果は、明らかだった。
「……××××」
その時つぶやいた言葉を、もう二度と、クレフは人生で口にすることはない。
 
 **
 
「……私は、ヒトではないな」
 それから、遥かな時が流れた。七百年。ヒトというよりも、樹木のような、風のような永い永い寿命を生きた。
いつの間にか、師の年齢を遠く追い越している自分に気づく。
 
導師クレフは、ゆったりと巨樹の枝に背中をもたせかけていた。
そして、遠い青空を見上げ、その青さに眉をひそめた。

――
2 につづく

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