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レイアース二次小説置き場 (Last One)

「魔法騎士レイアース」クレフ中心の長編小説を置いてます。

2020.01.19
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2012.10.21
「……ランティス? 入っていい?」
遠慮がちに扉がノックされたのは、もう夜中のことだった。

「つづきはこちら」からどうぞ。

――

ランティスは、チゼータの飛行艇の通路を歩いていた。窓の外には闇が広がっている。セフィーロを発って早くも二日が経っていた。あともうすこしでチゼータに着く、とタータからは説明を受けている。光は嬉しそうに頷いていたが、その後、ランティスが部屋を訪ねた時には姿が見えなかった。セフィーロではないためか、よく知っているはずの光の気配がうまく追えない。

―― 話すべきではなかったか……
二日前の夜に起きた、オートザムの手の者によるイーグルの拉致未遂事件。あの事件の後すぐ、クレフからは問題ない、とテレパシーで伝えてきた。限られた者しか通れないようにイーグルの周囲に張ったバリアを強化し、ラファーガが警備についているという。即座に最善の手段をとったクレフに感謝していたが、それでもイーグルのことが心配だった。そのせいでその日は深夜まで眠れず、部屋の灯りをつけたままでいた。



二日前。

「……ランティス? 入っていい?」
遠慮がちに扉がノックされたのは、もう夜中のことだった。
「どうした、ヒカル」
「ううん。なんか眠れなくて。そしたら、ランティスの部屋の灯りがついてたから……」
ワンピース型の寝間着に、カーディガンを羽織っている。いつも三つ編みにしている髪は解かれていた。目をこすっていた光が顔を上げ、ランティスを見る。それと同時に、ハッと目を見開いた。

「どうしたんだ?」
眠そうだったその目が、強さを取り戻している。
「何かあった顔をしてる。……イーグルに、何かあったのか」
「なぜ、そう思う」
顔を見て数秒も経たないのに、そう言い当てられたことに驚いた。
「ランティス、イーグルのことを考えてる時、『心』が表情に出るから。今は、悲しそうな顔してる。何があったんだ?」
その声は、確信に満ちている。普段はあどけなさが先に立つ少女なのに、こんな時は光が最後の『柱』として選ばれたのだと思い出す。隠せないな、と思った。そもそも、光に対して、隠し事は無用だ。

光は、息を詰めてランティスの言葉を聞いていた。そして、話終わったとたん、ふー、と息をつく。二人は、窓からの夜景を隣に、椅子に座って向き合っていた。淹れられた紅茶は、互いに手をつけないまま冷たくなっていた。
「よかった。みんな、無事だったんだね」
「ああ」
「浚われそうになっても、目も開けられないし動けないんじゃ、イーグルだって怖いよね」
光は両手を固く握って膝の上に置いていたが、すっくと立ち上がった。
「ランティス、セフィーロへ帰ろう。みんなが心配だ」
ランティスは無言で、首を振った。
「どうして?」
「……導師クレフが、チゼータへ行けと言った。あの人が言うことには、必ず全て理由がある。だから、戻ってはならない」
立ち上がったままの光が、そのまま考え込む。やがて、彼女にしては弱い笑みを浮かべた。
「そういえば、初めてセフィーロに来た日、クレフがアルシオーネの襲撃から私たちを守って逃がしてくれて……クレフが心配だからって私が戻ろうとした時、風ちゃんに同じ事を言われたっけ。戻ってはいけないって」
「行くべきだと、俺も思う」
「……うん」
光は後ろ髪を引かれているような顔をしていたが、それでも納得し、その日は部屋に戻ったのだった。



結局、クレフが戻るなと言った理由については、光に告げなかった。ランティス自身、はっきりと理解しているわけではなかったからだ。きっと師は、何かの前兆を掴んでいるが、明確に把握するまでにはいたっていない。「嫌な予感がする」程度なのかもしれない。だから、他国へ旅立ったランティスたちが何かを掴むのを期待しているのだろう。
―― 「導師クレフ。あなたは、何を掴んでいるんだ?」
そう尋ねた時のクレフの沈黙が、嫌な余韻となって残っていた。

「……ヒカル」
ランティスは、飛行艇の先端に近い通路に立ち、チゼータの方角を見つめている光の後ろ姿を見つけて歩み寄った。その肩は小さく、まるで子供のように華奢な体をしている。
「そんなところに立っていると冷えるぞ」
隣に立つと、きゅっ、と手を握られた。その目は、まっすぐに前を見たままだ。心細いからではない。ランティスがまだ悩んでいるのを知っていて、支えようとしているのか、この小さな手で。ランティスは、その手を握り返した。

不意に、飛行艇の中に音楽が響き渡った。
「間もなく、船はチゼータに着陸します。皆、着陸準備を開始してください。繰り返します――」
「わぁ!」
光が大きな声を上げる。そして、前を指差した。

遠くに、チゼータの街の灯がきらめいているのが見えた。

17. につづく

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