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レイアース二次小説置き場 (Last One)

「魔法騎士レイアース」クレフ中心の長編小説を置いてます。

2020.01.20
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2012.10.24
フェリオは、風が走って来るのを見て、笑顔で手を大きく振った。

「つづきはこちら」からどうぞ。

――

ファーレンの、早朝のさわやかな空気が、笹のような葉を揺らしていた。高台から見下ろすと、段々畑や田が一面に広がっている。こんなに朝早いのに既に田畑には人がいて、畦道ではヤギに似た生き物が、二頭の子供を連れて草を食んでいた。
「綺麗ですわね……」
風は、胸を逸らして大きく息を吸い込んだ。アスカに聞いたところ、これから季節は涼しくなっていくとのこと。東京でいう秋のようなものなのだろう。

初めて訪れた国なのに、初めてという気が全くしない。アスカを見た時にも思ったのだが、人々の顔立ちは日本風で、景色も日本の田園風景をほうふつとさせる。今風が手を掛けている木も、竹とどう違うのか見わけがつかないくらいだった。

とはいえ、風が住んでいるのは典型的なヨーロッパ調の邸宅で、親戚たちも皆、洋風の家に住んでいる。それでも、今の目の前の景色は、異世界なのに自分のルーツを強く思い起こさせるものだった。米にそっくりな植物の稲穂は金色に光って垂れさがり、果物や野菜は畑に実っている。国の豊饒さが伝わって来るような風景だ。


「あら?」
風は首を傾げた。少し離れた畦道に、フェリオが立っている。三角錐型の笠をかぶった男と、何か話込んでいた。傍には子供たちがいて、珍しそうにフェリオを見上げている。この日本に似た景色の中にフェリオがいると、風にとってはものすごい違和感だ。一体何を話しているのか。風は小走りに二人の方へ向かった。

フェリオは、風が走って来るのを見て、笑顔で手を大きく振った。
「おはよう、風」
「おはようございます、フェリオ。朝早いですね」
「風こそ。今、この人たちに、何をやってるのか聞いてたんだ」
「何って、そんな珍しいことやってないぞ。農作物を育ててるんだ」
笠をかぶった、人のよさそうな男が、背後の畑に視線をやって言った。フェリオは物珍しそうに、農具を見下ろしている。
「そうか、自分たちで、食用になる野菜や果物を育ててるんだな」
試しに鍬を手に取り、振り下ろしてみる。そんな体勢じゃ駄目だぁ、と子供たちが一斉に笑った。

「そういえば、セフィーロでは、皆さん食べ物はどうなさってるんですか?」
風はふと気になって聞いてみた。今まで何度も不思議に思っていたのだが、セフィーロではいつも食べ物は潤沢にあったが、畑というものを見たことがなかった。最も、風達三人はセフィーロの住人にはそれほど関わらなかったから、居住地では畑があるのだろうと想像していたのだ。フェリオは当たり前のように答えた。
「果物は勝手に木になってるし、食べられる野菜はそこらじゅうに生えてる。その辺にいる動物の乳を搾って飲んだり、魚を食べる奴も一部いるな」
「……そういえば、肉を食べたことは一度もありませんわね……」
「獣の肉か!? 普通、喰わないぞ」
フェリオの驚き方に、逆に風は驚いた。東京では毎日肉を食べている、などとは言わない方がいいのだろう。風はにっこり笑って話を流した。
「そう……食べ物を作る必要がないのですね」
「セフィーロってのは、すげえ国だな。魔法の国だって言うけど、天国みたいじゃねぇか」
男は、背後の子供たちと顔を見合わせている。フェリオは笑って手を振った。
「姉上のころ……前はそうだったけど、最近はそうでもないんだ。自分が食べるものは、ある程度自分で育てなきゃいけなくなった。だから、こういう技術を学んで、セフィーロに広めたいんだ」

フェリオは立っているところが高い、と風はその横顔を見て思った。王子という立場がそうさせるのだろう、常に、セフィーロにとって何が一番いいかをよく考えている。風は今、何の責任のある立場でもないが、それでも自分の周りの人のために、何ができるか考えてみたいと思った。

ふ、と顔を上げた時、見慣れた小さな姿が視界に入った。
「お二人とも。朝食の時間ですよ。アスカ様も御屋敷でお待ちです」
「サンユンさん。ありがとうございます」
にっこりと笑って頭を下げ、サンユンに歩み寄る。
「すばらしい国ですわね」
そう褒めると、その色白の顔が一気に赤くなった。
「そうなんです」
大きく頷いたその顔は、誇らしげだった。
「ファーレンには、セフィーロのように魔法はありません。皆、自分の力で生活を切り開かねばなりません。大変ですが、私は誇りに思っています。その国の王になられるアスカ様にお仕えしていることも」
「……あなたは、幸せな人ですわね」
大切な人に信頼されて、ずっと一緒にいられること。自分がすばらしいと思えるもののために働けること。サンユンは目立たないけれど、芯が強いひとだと風は思っている。信じるもののために生きるひとは、強い。

「……王子も、幸せな方だと思いますよ」
そう返されて、びっくりしてサンユンを見た。サンユンは、慰めるような目をしていた。フェリオを愛していながら、東京を捨ててこの世界に生きようとはしない自分を淋しく思った、そんな風の気持ちがどうして分かったのだろう。比べてもしかたがないと思いながら、何の障害もなく一緒にいるアスカとサンユンを、うらやましいと思ってしまった。
「……ええ。そうだと、私も嬉しいです」
風は微笑んだ。

20. はこちら

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