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レイアース二次小説置き場 (Last One)

「魔法騎士レイアース」クレフ中心の長編小説を置いてます。

2020.01.20
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2012.10.01
「あのひとは、ティーカップに触れないくらいに熱い紅茶を、少しずつ、少しずつ飲むのが好きだと言う。」


本文は、「つづきはこちら」からどうぞ。

――

あのひとは、ティーカップに触れないくらいに熱い紅茶を、少しずつ、少しずつ飲むのが好きだと言う。
そうは言っても、沸騰直後の湯だとさすがに火傷してしまう。プレセアは、ソーサーにティーカップを置いて、少しだけ待った。
やわらかな風が、頬を吹き抜けてゆく。外を見上げれば、さわさわと緑が鳴る。
室内と外の間はよく見れば、しゃぼん玉の膜に似たものに隔てられている。
そよ風は通すが、雨や暴風は全く通さない。これもクレフの「魔法」だというのだから、一体どういう仕組みなのか感心してしまう。
導師クレフのために紅茶を淹れるひとときは、プレセアにとって至福の時間だった。傍にいる、と感じられるからだ。

「デレデレしてしもて、まぁ。バレバレやわ」
気づかない内に、微笑んでいたらしい。間髪いれず、その場を通りかかったカルディナに声をかけられる。
小麦色の肌の、同じ女ながら惚れ惚れするほどメリハリの利いた体を惜しみなく見せている。
「バレバレって、何が」
「導師クレフのこと。惚れてるんやろ」
ドキリとする暇もないほどにはっきりと言われて、プレセアは口ごもる。

「あんた今、どうやって隠そか、なんて思ってるとこ?」
カルディナは眉を下げ、やれやれ、と言いたそうな顔をした。
そしてずかずかと歩いてくるなり、プレセアの鼻先に指をつきつけた。

「あんた。言っとくけど、もったいないで」
「……何がもったいないのよ」
「導師クレフに惚れても、なんにも返って来うへんで。あんたやなくても、あの人は誰のことも女として見いへん」
ぐっと言葉に詰まったのは、それは事実だと思っていたからだ。
カルディナに言われるまでもない。ずっと隣にいる自分が、一番よくわかっている。
「いいのよ。男女として結ばれるばかりが恋愛じゃないもの」
「はっ、なにお嬢さんみたいなこと言ってるんや? 抱いてくれへん男なんて、おらんのと同じや」
あまりにはっきり言うカルディナに、プレセアは驚いていいのか呆れていいのか分からず黙った。ただ、少しだけうらやましくもある。

カルディナはさらに言い募った。
「あんた綺麗なんやし、ほんまにもったいないで? あんな若づくりの爺さんのことなんて――」
「誰・が、若づくりの爺さんですって!!」
突然大声を上げたプレセアの権幕に、カルディナは一歩退いた。
「クレフの悪口を言う奴は、カルディナだって許さないわよ!」
「わかった、わかったって。冗談やん、ほんまあんた、導師クレフのことになるとヒトが変わるな」
ふくれっ面をしていた自覚はあった。カルディナは不意に悪戯っぽく笑うと、プレセアの頬をちょんとつついた。
「な、なによ」
「でもあんた、今の顔はちょっとかわいかったで」
「はっ?」
可愛い、なんて久しく言われたことはない。少なくとも、最高位の創師になってからは一度もない。
戸惑っていると、ケラケラと笑われた。猫のようにくるくると表情を変えるひとだと思う。
「いっつも、お母さんみたいな包容力ある顔しとらんで。たまには、ねだってみたらええやん。案外、応えてくれるかもしれんで?」
「ねっ、ねだるって何をよ!」
「自分でかんがえなー」
おかしな節をつけて歌うように言うと、カルディナは身軽な動きで踊るように階段を上り、歩き去ってしまった。
「もう……」
この平和な日常に、つむじ風を吹かせてくれたようなものだ。鼓動は、わずかに不協和音を奏でている。
でもプレセアは決して、カルディナのことが嫌いではなかった。

――
3. はこちら

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