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レイアース二次小説置き場 (Last One)

「魔法騎士レイアース」クレフ中心の長編小説を置いてます。

2020.01.24
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2012.10.28
「私、もしかして、大変なことを……見逃してたのかも」

つづきはこちら からどうぞ。

――

「ウミか。入れ」
クレフの返事を聞くのももどかしく、海はクレフの部屋の扉を開けた。
「光から連絡が来てるんですって?」
「ああ」
振り返ったクレフはいつもの法衣で、私服を期待していた海はちょっとだけがっかりする。
「じゃ、なくて。光、だいじょうぶ? ちゃんとご飯食べてる? 切なくなってない?」
「……お前はヒカルの親か」
クレフは少し呆れたようだった。そして、顎をしゃくって青空の方を見やる。
「もうつながっている。好きなだけ話すがいい」
「……」
「……」
「……えっ?」
海の目は電話機らしいものを探したが、それらしきものは何もない。
「あの……どうやって?」
「通信すればいいだろう?」
クレフは自分のこめかみを人差し指でトンとついた。海はがっくりとうなだれたが、すぐに起き直った。
「一般の女子高生は、宇宙と交信なんてできないの! なんかこう、ないの? 電話みたいなやつ!」
「デンワとはなんだ?」
「え、電話、電話……こんなのよ」
当たり前だと思っているものを、当たり前のようにどんなものだと聞かれると困ってしまう。海は、空中に電話の輪郭を描いた。なぜか、使ったこともないのに典型的な黒電話を描いてしまった。描きながら、そもそもセフィーロとチゼータの間に電線がないから、電話なんてあってもつながらないわよね……と考えている。

ふぅん、とクレフは考えながら頷き、手にした杖をちょっと掲げた。すると机の上に、色こそ青だが、黒電話らしきものが忽然と現れた。海は歓声をあげて駆けより、コードがどこにもつながっていない……というよりもコードがないことに気づいてがっかりする。
「そうよね、当然よね。でもコードがなければ、おままごとにすぎないわよ!」
がちゃり、と受話機を取る。
「ああっ! 海ちゃん! よかった話せた!」
途端に、光の元気な声が耳に飛び込んで来て、海は耳を疑った。

「……なんで?」
「お前はいつも、それを使って話していたのだろう。いつもと同じ行動をとることで、通信しやすくしただけだ。やっていることはコレと変わらん」
再びこめかみを指差すと、クレフは海に背を向けた。
「好きなだけ話すといい。わたしは散歩でもしてこよう」
「……いいのに。でも、ありがと」
クレフに隠すような話はないが、それでも気をつかってくれたのだろう。いったん背中を向けたクレフは、ちらりと振り返った。
「……寝るなよ」
多分にいたずらっぽい言い方だった。
「分かってるわよ!」
当然のようにこの間のことを思い出して、海は赤面する。クレフは笑い、部屋から出て行った。


**


受話機を再び耳に当てると、光は笑っていた。
「クレフと海ちゃんって、ほんとに仲良しだね!」
「そう……かしら?」
後半は疑問形になった。仲がいいというか、最終的にはいつもからかわれている気がする。
「本当だよ? よかった、海ちゃん元気そうで」
出発する時に、海のことを心配していたという風の話を思い出して、海は微笑む。
「私はだいじょうぶよ。みんなと楽しくやってるから。ていうか、光こそだいじょうぶ? お腹すいてない? 変な人に声かけられてない?」
「うん、お腹いっぱいだし。変な人なんて誰もいないよ!」
前半はとにかく、後半は当てにならないわ。そう思いながらも、一週間ぶりに聞く光の声は元気いっぱいで、海の心も明るくしてくれる。

「ランティスと私、今晩チゼータを出発して、セフィーロに帰るから。何か、お土産で欲しいものある?」
「いいわよ、お土産なんて。セフィーロにいること自体、旅行みたいなものだしね」
「私が買って帰りたいんだ」
そう言われて、しばらく考え込んだ。
「そうね……タータとタトラ、いつもいい香りがするわよね。チゼータはお香が有名ってタータが言ってたから、もし手に入りそうだったらお願いね」
「あちこちに売ってるの見た! まかせといて。他のみんなにも買ってくるね! 似合いそうなの」
こくん、と大きく頷く光の顔が、目に浮かぶようだった。

こうやって話していると、東京で光と電話している時と変わらない。ここがセフィーロだと忘れそうになった時、光が少し声を潜めた。
「海ちゃん。そっちに、チゼータの人って来てないよね?」
「え? ……あぁ、一人、変なのに会ったわ」
一週間前の夜に海沿いでくつろいでいた時、チゼータの若者に声をかけられたのを思い出していた。
「マスターナって人じゃないよね?」
ずばりと名前を言い当てられて、海はぎょっとして受話機を見やった。
「なんで知ってるの光? あなたもナンパされたの?」
肩を抱かれた時の感触がよみがえり、ぞわっとする。いい男には違いないが、海は生理的に無理なタイプだった。
「え、海ちゃん、大丈夫?」
「あ、私はなんともないの。クレフが鉄槌食らわせてくれたから」
「なにかあったんだな……」
「でも光、なんでマスターナの名前を知ってるの?」
海が尋ねると、光はすぐには答えなかった。

「……預言者、なんだって」
「預言者って?」
「うん、ランティスに聞いたんだけど、占い師みたいなものなんだって。未来を知ることができるって。今まで、外したことがないんだってタータとタトラが言ってた」
「そうなの!? 信じられないわ、そうとう、うさんくさかったわよ」
預言者や占い師、というと、紫色のローブを頭からすっぽりかぶって、人前に姿を見せないイメージがある。あの調子のいい男と、その肩書きがどうしても被らなかった。
「……あ、でも」
「どうしたんだ?」
何かが引っかかる。何か、預言めいたことをあの男は口にしなかっただろうか。

「その人、チゼータの人達がたいせつにしていた本を、持ち出しちゃったみたいなんだ。だから、みんなマスターナを探してる」
「持ち出したって……」
光の言葉に、海の意識が呼びもどされる。持ち出したとはソフトな言い方だが、つまりは盗んだということではないのか。
「分かったわ。次会ったら……会いたくないけど……その本と一緒にチゼータに帰るよう、きつーーく言い聞かせておくわ」
「う、うん。本さえ返ってきたら、とりあえずいいみたい」
「光、甘いっ! 平たく言えば泥棒でしょ。言う事きかなかったら、プレセアに折檻してもらうから」
「……プレセアはちょっと」
思い浮かべたのだろう、光は止めたそうだ。泥棒にまで気を使う光はほんとうに優しいのだが、時には相手に厳しくすることも必要だと思う。海はため息をついた。

「海ちゃん?」
「いいえ、なんでもないわ。光、気をつけて帰って来るのよ」
「うん! 戻ったら、またいっぱい話そうね!」
それからしばらく話して、通話を切った。海はしばらくその余韻を楽しむように、そのまま椅子の背もたれに横向きに腰かけていた。
「……そうだ、クレフにお話が終わったって伝えにいかなくちゃ」
そう独り言をいって、立ち上がる。胸の片隅に、なにか引っかかるような気持ちを抱えていた。


**


外に出ると、もう暗くなっていた。文字通り「水色」の海原が続き、水平線の向こうは夕焼けのピンクが残っている。いつ見ても、恥ずかしくなってしまうくらい可愛らしい風景だ。上空には、いつものようにチゼータ、ファーレン、オートザムの三国の星が浮かんでいるのがくっきり見える。
「クレフ? どこ?」
クレフは日が沈むと部屋の中に入り、自分の研究に没頭しだすのが、いつものパターンのようだった。そろそろ空気も冷えてくる。いくら導師でも体は少年と変わらず、暑さ寒さにあまり強くないのには気づいていた。

「クレ……」
若葉の茂みを掻きわけた時、海は息を飲んだ。そこには小さな滝があり、滝の下は滝壺というにはこじんまりとした泉があったが、その脇にクレフが立っていた。泉の中には、水がその場から立ちあがったように巨大な青い影ができていた。その形を見て、海は声を上げそうになる。
―― セレス?
その姿は、青く透けていたが龍に違いなかった。でも、セレスとは色合いも形も違っていることにすぐに気づく。目の辺りが、他の部分より黒っぽくなっていた。

龍はその長い首をクレフに向かって垂れていた。クレフは右手を高く差し上げ、その頬に触れる。龍が更に首を下げ、互いの頬が触れあっている。海は声を上げることができなかった。それがとても密やかな行為に見えたことがひとつ。もうひとつは、ちらりと見えたクレフの横顔が、初めて見るほど厳しく見えたためだった。

不意に龍がちらり、と顔を上げた。その目が、海の方に向けられる。海は、どうしたらいいのか分からずに立ちすくんだ。
「……ウミ」
クレフが気づく。そして龍から離れた。龍は首をゆっくりと暮れなずむ空に向ける。首から順番に、体が水に戻ってゆく。ぱしゃん、という水音を残して、泉の中に消えた。
「な、なに、今の……」
「ただの龍だ」
「ただのって」
こともなげにクレフは言ったが、「ただの」龍なんて存在しないと思う。それに、さっきクレフが見せていた表情が気になった。
「今の龍。クレフに何か伝えようとしてたの?」
クレフは首を横に振ろうとしたが、途中で止めた。
「クレフ」
「……空気が騒いでいると言っていた」
「……空気が?」
「何かが起こりそうだぞ」
空を見上げたクレフの瞳が険しい。海に対して、もう感情を隠していないのだ。海がじっと見下ろすと、クレフは顔を上げた。
「中に入っていろ、ウミ。……春とはいえ、夜は冷える」
「ええ。クレフも一緒に行きましょう」
「いや、私は」
言いかけたクレフが言葉を切る。海が、杖を持っていない方のクレフの手を掴んでいた。
「大丈夫よ」
そのまま、城内に足を向ける。この、不穏な空気が晴れるまで、セフィーロにとどまろう。ここには、クレフもいればプレセアも、ラファーガもカルディナもアスコットもいる。もうすぐ、光と風も戻って来るだろう。あの戦いを乗り越えた、大事な仲間だ。なにがあろうと、みんながいれば、大丈夫だ。

クレフは少し困った顔をしたが、海が手を引いて歩き出すと、抵抗せずに後ろからついてきた。
「――あ、そういえばね、クレフ。あのマスターナって言うひと……」
実は、預言者だって光が言ってたんだけど。そう続けようとして、海はぴたりと足を止めた。
「ウミ?」
いぶかしげなクレフの声を、背中に聞いたが、答えられなかった。

―― 「でも、このままチゼータにおったら、危ないしなぁ。どうせここに来ることになるし」

電流のように、マスターナの何気ない言葉が頭に閃いていた。
「クレフ」
「なんだ?」
「あのね」
「どうしたんだ? 顔色が悪いぞ」
「私、もしかして、大変なことを……見逃してたのかも」
「ウミ、落ちつけ」
クレフが海の手を逆に引いて近づけたその時、クレフの横顔が赤く照らし出された。

はっ、とクレフと海は同時に上空を見上げた。上空に浮かんだ星のうちの一つが、真っ赤に光っていた。何度か、赤い柱のようなものが爆発的に立ち上がるのが、セフィーロからでもはっきりと見えた。炎だ、と気づいたのは数秒後のことだった。炎が、星全体を覆いつくそうとしている――!
「チゼータか?」
さすがのクレフが愕然としている。
「うそよ」
海の声が震えた。
「あそこには光がいるのよ!!」


24 につづく

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