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レイアース二次小説置き場 (Last One)

「魔法騎士レイアース」クレフ中心の長編小説を置いてます。

2020.01.24
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2012.11.01
「……これこそ、魔法騎士たちが『セフィーロ』にもたらした変革だな。……お前たちは皆、成長した」

つづきはこちら からどうぞ。

――

「次が来るぞ。準備はいいか」
「ええ!」
円陣の中に渦巻く力が、海の髪を巻きあげる。海は、杖をぐっと握りしめた。海の手の少し下に、クレフの手がある。しっかりと支えている力を感じる。もしもたった一人なら、セフィーロ全土を揺るがす衝撃波の前に、とっくに絶望していただろう。たった一人が隣にいてくれるだけなのに、こうも違うものなのか。海は改めて、全く動揺を見せていないクレフの横顔を見下ろした。ひとりの人間の存在の大きさを、こんなにはっきりと感じたことはない。そして、クレフでなければこうは思わないだろうこともはっきりしていた。
「……大丈夫か?」
クレフが気遣う視線を向けるのに、海はわずかに微笑んで見せた。
「私、嬉しいわ。クレフと一緒に戦えて」
クレフは少し、驚いた顔をした。やがて、ゆっくりと口角を上げる。
「私もだ」

第二波が襲って来たのは、クレフが言い終わるのとほぼ同時だった。ごう、と空が唸り、雲がものすごい勢いで駆けてゆく。と思った瞬間、突風が上から吹きつけ地面は揺れた。海は歯を食いしばり、衝撃に耐えた。骨がきしみを上げる音を聞いた気がした。力が、杖にどんどん吸収されていく。まるで、自分がそのまま吸い込まれてしまいそうだ。負けてたまるか、と思った時、自分の手の周りが薄青く発光しているのが見えた。
「―― なんだ?」
クレフが顔を上げる。青みを帯びていたバリアの色が、濃くなったように見えた。と同時に、地震は除々に小さくなる。
「誰の力だ? これは」
誰かが力を貸し、バリアを強化したことで衝撃波の威力が押さえられている。

「大丈夫ですか?! 導師クレフ、ウミ!」
城の中ほどのテラスに、プレセアとラファーガの姿が見えた。その周囲に、何十人もの人々の姿があった。魔導師、召喚師、剣闘師、創師――どの職業かは海には見分けはつかなかったが、普通の住人ではなく、特別に『心』の強い者たちだということは分かった。
「お前たち……」
「導師だけに負担をかけさせる訳にはいきません。『セフィーロ』は、私たちの国ですから」
「……」
しばらく黙っていたクレフの力が、ふっと緩んだ。周囲の縁が、その光を弱める。

「ウミ! 導師クレフ!」
茂みを掻きわけて、息せききったアスコットが現れた。
「アスコット!」
顔を上げた海と目が合うと、アスコットは青白い顔色をしながらもほっとしたように微笑んだ。
「良かった、無事だったんだね。導師クレフの円陣に踏み込むのが見えたから、どうなるかと心配したよ」
「そんな……無茶だった?」
海がクレフとアスコットを見比べる。クレフはこくり、とはっきり頷いた。
「でも、みんなが立ちあがったのは、ウミのおかげだ」
「え?」
続くアスコットの言葉に、海は首を傾げた。
「みんな、知らなかったんだ。この『セフィーロ』を守る力が、自分たちにあるってことを。守られることが、空気みたいに当たり前だったから。でも、ウミが導師クレフを助けようとするのを見て、みんな、はっとしたんだと思う。自分にもできることがあるって」
「……これこそ、魔法騎士たちが『セフィーロ』にもたらした変革だな。……お前たちは皆、成長した」
クレフは微笑んだ。

まさか、そんなことを言われるとは思っていなかった。海は自分の思いで必死だったのに、そんな風に感じた人がいるのは意外でもあり、照れくさくもあった。
「でも。私の力なんて……」
「いや、さっきは正直驚いた。私の力は第一波の時よりも落ちていた。それでも押し返せたのはおまえがいたからだ。……ありがとう」
慰めてもらったり、庇ってもらったことは数あれど、こんな風に自分の力を褒めてもらったのは初めてだった。というよりも、導師クレフは優しい半面厳しいところもあり、本気で褒めたいと思わなければ褒めないことはよく知っていた。
ううん、と海は首を振った。いろんな感情の入り混じった涙が、少しだけ浮かんだ。

杖を持ち替えたクレフの掌に、血がにじんでいる。
「爪が傷つけたのね……待ってて、今何か布を」
「まだ、終わっていない。威力は下がって来ているが、第三波が来ることもありえる。油断するな」
クレフの視線は、すでにチゼータに向いていた。今や太陽のように、真っ赤に光り輝いて見える。夜に近づく空の中でそこだけが煌々と赤く不気味だった。アスコットは不安げに、クレフを見た。
「一体、何が起こったんでしょう? 他国の襲撃か隕石か、火山でも噴火したのかと、みんな様々に言っていましたが」
「……どれだったとしても、他国にこれほどの影響はもたらさない」
クレフは首を振った。
「そうよ! ファーレンとオートザムも、セフィーロと同じ状態ってこと?」
海の頭に、風とフェリオが浮かんだ。
「被害は避けられなかっただろうな。セフィーロも、守れたのは城内まで。城外の森や海は被害をこうむっている。ファーレンはチゼータに最も近い。被害は受けているだろうが巨大な国だ、被害は限定的だろう。しかし、オートザムは……」
クレフはそこで言葉を切り、ファーレン・チゼータと少し離れたところに見えるオートザムを見やった。
「バリアを張って国を守りはしただろうが、元々精神エネルギーが枯渇していたところだ、今後の影響は大きいだろう。下手をすれば、大気の浄化システムを保てなくなる可能性はある」
「でも、みんなで協力すれば、チゼータとオートザムも……」
「チゼータはもう駄目だ」
クレフは言い切った。
「今余力があるのは、セフィーロとファーレンのみ。中でも国土が最も広いのはセフィーロだ。チゼータからの避難民を受け入れる準備をせねばな」
海は改めて、ぞくぞくするものを感じていた。チゼータからの避難民を受け入れるとすれば、「すぐにセフィーロに来ることになる」というマスターナの言葉の後半も実現することになるのだ。必ずそうなるに違いない、という不気味な予感があった。

「……交信できないの? ランティスと光に」
海は、怖くて聞けなかったことを聞いた。
「試みてはいる」
チゼータを見上げたクレフの横顔が一瞬、苦痛を感じているかのように歪んだのを海は見逃さなかった。試みたが、返事はなかったのだ、と十分に物語るものだった。ランティスも光も、クレフにとっては「教え子」なのだ、と海は思い出さずにはいられなかった。「教え子」という言葉を、どれほどクレフが優しく口にするかということも。離れた場所にいて何もしてやれないことが、師としてどれほど辛いか。声が届かないのが、どれほど悲しいか。その苦痛には、750年生きても、経験豊かでも、決して慣れることはないのだろう。

海とアスコットは同時に唇を噛んだ。クレフは微笑んで、首を振った。
「受け手が別のことに気を取られていれば、交信できなくなることは少なくない。この状況だ、無理もない」
「こんなことが起こるなんて」
アスコットは呻くように言った。
「過去にも、このようなことはなかったんでしょう?」
「過去には、」
クレフは何気なく答えかけたが、唐突に言葉を切った。はっとしたように、改めて夜空に視線を戻す。
「導師クレフ……?」
「……いや、気のせいだ」
クレフはすぐに言葉を継いだ。いったい何を否定したのか聞きたかったが、クレフの表情は妙に青ざめて見えた。

26 につづく

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