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レイアース二次小説置き場 (Last One)

「魔法騎士レイアース」クレフ中心の長編小説を置いてます。

2020.01.24
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2012.11.04
「……お前は、何も導師クレフから聞いてはいないのか」

つづきはこちら からどうぞ。

――

ジェオは自動扉から廊下に出た。揺れは収まっていたが、まだ地面が揺れているかのようだった。マスクを外した人々が、当惑したように言葉を交わし合っている。灯りがついた廊下は薄赤く、不気味な色に染まっていた

混乱している今なら、マシンを一体拝借してセフィーロに向かうことはできる。でも、今何が起こっているのか確かめずに逃げるのは、ジェオの愛国心が許さなかった。迷わずに、廊下を壁伝いに走り司令部に向かった。初めに目にした軍人に声をかける。
「おい! 一体何が起こったんだ! 何か情報はねえか」
「分からない! ただ、精神エネルギーの残存量が激しく低下していると聞いた。このままでは、国が――」
ジェオが捕えられたことを知らないのか、知っていてももう余裕がないのか、脱走したことをとがめられはしなかった。ただ、度を失ったその態度から、ただならぬものを感じた。

エレベーターは混雑しているのか使えなかった。ジェオは手すりにつかまりながら、がむしゃらに階段を何階か上がり、司令部へのドアをこじ開けた。その部屋には何人もの重鎮が到着していて、その中には大統領の姿もあった。厳しい表情で腕を組み、モニターを見上げている。

モニターに大きく映し出された映像に、ジェオは目を疑った。そのネックレスのような特徴的な形の星は、チゼータに違いなかった。チゼータが燃えている――
「なん……だ? 自然災害なのか」
唖然としたジェオの声に、大統領は振り返った。ジェオを見ても、脱走したことを咎める素振りは見せなかった。もっともこの状況では、一軍人にかまっている場合ではないだろう。
「原因は不明だ。15分前、チゼータに謎の爆発が起こり、星全体が1分も経たない間に炎に包まれた。10分前、オートザムを衝撃波が襲ったのは知っての通りだ。このままでは、第二・第三の衝撃波も考えられよう」
「そん……な、あの星には、ランティスと光が……」
「一時オートザムに滞在していた者と、魔法騎士か」
大統領は一瞬瞑目するように視線を下に向け、次いでチゼータに戻した。
「この状態では、チゼータは滅亡はまぬがれまい」
生存は絶望的だ、と言われたに等しかった。淡々とした口調に、逆にぞくぞくと恐ろしさが背中を駆けあがった。確かに、この星を覆い尽くした炎の中で、生きていられるとは思えなかった。

頭の中に唐突に、マスターナの声が浮かんだ。
―― 「ただ、チゼータは、もう、間に合わなかった」
炎が見えるとも、彼は言っていた。ジェオはあの時取り合わなかったが、「こういうこと」だったのか? 冷静に、大統領がこちらを観察している視線を感じた。裏腹に、鼓動は高まり始める。マスターナは「預言者」だという。彼が本物なら、他の預言も当たるのではないか?

「あと、15日だ」
「は?」
大統領の言葉に、ジェオは聞き返した。そして、大統領が続けた言葉に、彼は耳を疑った。
「オートザムに残された時間だ。何も手を打たねば、あと15日間で、我が国も滅びることになる」
水を打ったような沈黙が拡がった。誰も、すぐには反応できなかったのだ。それほどに大統領の一言は重かった。
「どういうことです! オートザムは今の攻撃を防げたはず――」
そこまで言って、すぐに気づいた。
「さっき流れたアナウンスでは、システム全停止の原因はバリアを張って国と守ったからだと言っていた。まさか、そのバリアで全精神エネルギーを遣い切ってしまったということですか」
「……遠くない日に、遅かれ早かれ枯渇することは分かっていた。この場合、他に選択肢もない。非常用電源をこの建物内のみ、作動させる。全ての国民をここに集めよ」
「……それが可能なのが、15日、ということですか」
今や、ざわめきが指令室全体に広がっていた。この場で動揺を見せていないのは、大統領だけだった。

全ての住人を中心部に集め、それ以外の土地は廃墟となる―― これでは、まるで三年前のセフィーロではないか。
「いや、非常電源が持続できるのは、12日間だ」
「え?」
「ジェオ。さっき、お前が閉じ込められていた部屋を中心に、膨大な量の精神エネルギーが放出された。この建物を3日間維持できる量だ。今、非常用電源は作動していない。それなのにこの建物が維持されているのは、そのためだ。……あの部屋で、何があった」
「……導師クレフの『魔法』です」
「……『魔法』だと?」
ざわざわと、二人の会話を聞いていた将校たちの間からざわめきが漏れた。
「そんな非科学的なもので、この国のシステムが支えられるわけが……」
「こんな緊急事態に、一体何の冗談だ」
ジェオは周りの声には沈黙を守った。自分だって、この目で見るまで、セフィーロの『魔法』を知らなかった。セフィーロの城が、精神エネルギーだけでできていると頭では分かっても、その壮大なスケールにとても信じられなかったのだ。どんな言葉を持ってしても、説明は難しいと思う。

大統領は一度、頷いた。
「……なるほど」
そんな馬鹿な、という、予想された答えは返ってこなかった。むしろ、「予想通り」と言うに等しいものだった。ジェオを大統領は見返した。
「意外そうな顔をするな。私は導師の力を過小評価はしない」
ジェオが口を開きかけた時、司令室内に通信が届いた。
「戦艦は各々、非常用電源を作動し全システム復旧を終えています。しかし、この状況では――」
「かまわん。セフィーロに進軍せよ」
ジェオは思わず、まじまじと大統領の横顔を見やった。言いだしたことは曲げないと言っても、母国が危機的なこの状況で、非常電源を単体で持っている戦艦を出航させるとはどういうつもりなのか――

いや、これも戦略のうちなのか。
唖然としながら、ジェオは悟った。

マスターナという預言者がもたらした「古文書」。そこに記されていたという、「導師」が各国にもたらしたという危機を知り、食い止めたいと語った大統領の言葉は本当だろう。しかしそれと同時に、精神エネルギーが枯渇しているオートザムにとって、導師の持つ精神エネルギーは喉から手が出るほど欲しい。国の寿命があと15日しかない、そんな状況ではなおのことだ。

「導師をオートザムに連行する」ことがかなえば、危機を防げるかもしれない上、オートザムにとっては国益となり、二つの目的を同時に達する事ができる。結局のところ大統領は、タイミング良くもたらされた古文書の内容を利用し、あわよくばチゼータにつなぎを取り、セフィーロ侵攻の同意を得ようとしていたのではないか。いずれにせよ、このまま全員が国にとどまれば死を待つほかない。「セフィーロ侵攻」しか、オートザム存続の道はないのか。

「……それでも。こんなことは、間違っています」
ジェオは声を絞り出した。何か他に道はないのか。戦いを乗り越えて、やっと四つの国が手を取り合い、よりよい方向に全てが進んでいたというのに。創り上げるには長い時間がかかる。しかし、壊すのは一瞬だ。
「もう、生き抜くためには綺麗事を言っている場合ではないのだ、ジェオ。マスターナの預言を聞いたろう。……いや、もう預言ではなく『現実』と言っていいが」
国が、一つ一つ滅びてゆこうとしているのを、ジェオも認めざるを得なかった。チゼータは今目の前で、そして、オートザムもこのままではほどなく後を追う事になる。

もし、ジェオがセフィーロを知らなければ、大統領の言葉もやむなしと受け入れていただろう。かの国で暮らす人々に会っていなければ、心を痛めることはなかっただろう。
「一体、一人の人間を何だと思っているんですか?」
何を言っても駄目だと諦めながらも、勝手に言葉は口から転がり出た。
「ある面では世界を滅ぼそうとしている元凶のように扱ったり。ある面ではオートザムを守れる精神エネルギーの持ち主のように扱ったり。いいように利用することしか考えていない。信頼関係などみじんもなく、見下すばかりじゃないですか。導師クレフがどんな人間か、理解しようともしないで」
大統領は燃えさかるチゼータから視線を逸らして、ジェオを見やった。モニターの赤い光に、その頬が照らされている。

「……お前は、何も導師クレフから聞いてはいないのか」
そう言われて、違和感をおぼえた。そして、クレフ、という名前を彼が口にするのは初めてだと気づく。
「何をです?」
「導師クレフに限って言うなら、確かに世界を滅ぼす元凶にもなり得る。しかし、力があるというだけで、実行した本人であるかは別だ」
「……は?」
一瞬、何を言われているのか分からなかった。
「あの古文書によれば、いつの時代も導師はひとりではない。ふたりの導師が存在すると言う」
「ふたり……?」
そんなはずはない、とまず思った。そもそも導師を名乗るクレフ以外の人物に会ったことはない。もし二人目の導師が存在するなら、三年前のセフィーロの危機に姿を見せないはずはないように思えた。

「もし今もそうなら、もう一人の導師の名前はなんなんです」
「ロザリオだ」
「ロザリオ……導師、ロザリオ」
口の中で転がしてみたが、聞いた覚えも、口にした覚えもない名前だった。

28につづく

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