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レイアース二次小説置き場 (Last One)

「魔法騎士レイアース」クレフ中心の長編小説を置いてます。

2020.01.20
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2012.10.02
「私はそんなに、恐ろしいか?」

本文は、「つづきはこちら」より。

――


導師クレフの気配はつかみにくい、と誰もがいう。気配を追いかけることに慣れた、魔導師ですらそうだ。
まるで風や木石のように自然に溶け込み、人間離れした気配をもっているから、らしい。
プレセアは専門家ではないから、難しいことはわからない。ただ、導師クレフの気配が、わからなかったことは一度もないというと、みな一様に驚く。

「導師クレフ。お茶が入りましたよ」
プレセアがほどなく辿りついたのは、城内の居住区域だった。子供が走り抜け、大人が世間話に興じるような、まさに居住区の真っただ中である。
さっきの一室と同じく結界で覆われたそのエリアには、さんさんと外からの光が差し込んでいた。緑がざわざわとゆれ、波音の向こうには青い海が広がっている。
出来すぎではないか、と何だか見ていて恥ずかしくなるほど美しい景色だ。

賑やかなその場の注目が、プレセアに集中した。緑の葉が茂る樹上にいきなり声をかけたのだから、何事だと思ったのだろう。
「ああ」
応じたのは、大人にしては高く、子供にしては低い穏やかな声。がさ、と一瞬葉が揺れたと思うと、真っ白な影が地に落ちた。
「ありがとう、プレセア」
宝石のように真っ青な双眸が、プレセアを見上げていた。銀髪がきらきらと陽光に輝いている。
ほんとうに美しい色彩のひとだ、と、毎日見ているにも関わらずプレセアは驚いた。そう、まるでこの『セフィーロ』を凝縮し、ひとりの人間の姿に変えたかのように。

「導師クレフ?」
驚いたのは周囲の人々だった。まさか、こんなところで『セフィーロ』の最高責任者がくつろいでいるとは夢にも思わなかったのだろう。
人々はまるでコントのように同じ動作で驚き、焦り、一斉に頭を下げた。まぁすごい、とプレセアが呟くくらいだった。
ほど近い木に登って遊んでいた女の子が、ひょいと顔を突きだした。そして、地上のクレフと目が合った瞬間……一声叫んで、落下した。相当に驚いたらしい。

危ない! と一斉に皆が叫ぶ。クレフが、ひょいと手にした杖を子供のほうへ向けた。その杖の先に取りつけられた宝玉の中がぽう……と鈍く輝いた。
「……え?」
女の子が、きょときょとと周囲を見回す。まっさかさまに落ちるはずだったその小柄な体は、空中に浮かんで止まっていた。
そのままゆっくりと、体が地面に降りてゆく。ふわり、と音も立てず着地した。
「元気なのはいいが、怪我をするな」
ふ、とクレフの青い瞳がやわらいだ。こくこく、と顔を赤くして何度も頷く女の子を後に、クレフはマントを翻す。
称賛のため息が、そのあとを追った。

**

「……いったいどうして、居住区におられたのですか?」
日がさんさんと当たる一室で、プレセアはクレフに尋ねた。ティーカップを口元に運んでいたクレフは、苦笑いした。
「あの場所からは最も、朝日が綺麗に見えるのだ。早朝、あの樹上で朝日を見ていたら眠ってしまった。気づいたら人々が起きだしてきていて……人々の気配を楽しんでいた」
笑顔のクレフにつられて、プレセアも微笑んでいた。

このひとは、人々の話し声や足音、料理する音や笑い声、さまざまな音が交った「生活音」の中に身を置くのがとても好きだと前も言っていた。
どんな音楽を聴くよりも、心がやすらぐのだと。小鳥が、クレフの肩や膝にとまった。自分もあんな風に、クレフに寄り添ってさえずることができたなら、幸せだと不意に思った。
―― たまには、ねだってみたらええやん。
なんの脈絡もなく、カルディナの言葉を思い出して、なんとなく焦ってしまう。
動揺を打ち消すように、クレフを見た。

「下りて、会話に入られればよかったのに」
「私は人々にはよく、怖がられるからな」
「……は?」
「私はそんなに、恐ろしいか?」
クレフは、少し困ったように眉を下げていた。
「そんな!!」
突然プレセアが大声を上げて身を乗り出したために、クレフは驚いたように目を見開いた。クレフの傍にいた小鳥が飛び立つほどの大声だった。
「す……すみません」
こほん、と咳をひとつして、座り直す。

「大人は皆あなたを尊敬し、子供は憧れています。怖がるなんて絶対にありませんわ。あなたは、セフィーロ最高の導師なのですから」
「そうか?」
大して腑に落ちていなさそうな答えに、プレセアはもどかしい思いに駆られる。
「セフィーロが平和になっても大勢がこの城にとどまっているのも、あなたがいるからです。皆、ここにいればあなたが護ってくれると信じているのですわ」
「ここを護ったのは、ヒカルたちだ。私ではない」
「……もう」
一体、どうしたらわかってくれるのだろう。
この人は誰よりも永い時を生き、ひとの心にも通じているのに、どういうことか自分に向けられた好意や、自分の価値に気づく能力が欠落しているように見える。

しゅんとした顔を見せていたのかもしれない。クレフは少し、困ったような顔をした。
「……みんな、あなたのことが好きなんです。それはそのまま、受け取ってあげてください。みんなのために」
本当は、「みんな」と言いたくはなかった。その中に「わたし」を滑り込ませ、存在を薄めさせただけだった。
クレフは、少し眩しそうな顔をした。
「ありがとう」
そのたったひとことと笑顔が、心をやさしくほぐしていく。
さっきまで抱えていたもどかしさも忘れ、プレセアはそっと首を横に振った。

4. につづく

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