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レイアース二次小説置き場 (Last One)

「魔法騎士レイアース」クレフ中心の長編小説を置いてます。

2020.01.19
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2012.11.20
セフィーロの海は、昨日あれだけ荒れたのが嘘のように静まり返っていた。

つづきはこちら からどうぞ。

――

セフィーロの海は、昨日あれだけ荒れたのが嘘のように静まり返っていた。白い砂にエメラルドグリーンの海のコントラストが美しい。空は真っ青に冴えわたり、夏の初めを告げる入道雲が立ちあがっていた。

ひゅう、と一陣の風が吹き抜ける。フューラがさっと落ちるように上空から森に向かって空を疾走している。硝子細工に似た青く輝く胸びれを、翼のように広げている。その一端が、陽の光を受けてギラリと光った。眼下の森には、ところどころ昨日の衝撃波の爪跡が残り、木がなぎ倒され、茶色い地肌を見せている。

その背には、杖を持った導師クレフの姿があった。滑空するフューラの背中にありながら、その小柄な体は揺らぎもしていない。法衣が風にはためき、額の宝玉が海の光を反射した。銀髪が陽光にまばゆい。彼の瞳は、セフィーロのあちこちに残る傷跡に向けられていた。他人が見たらぎょっとするほどに、その視線は鋭かった。険しい表情は、かつてセフィーロが侵攻の憂き目を見た時にさえ、ついぞ見せなかったものだった。

「歴史は、繰り返すのか」

ぽつりと呟いた導師クレフの声は、あっという間に風に掻き消された。


**


そのころ海は、セフィーロの城内をクレフを探して歩き回っていた。
「もう、どこに行ったのよ」
かれこれ三十分は探しているのに、クレフを見たという者すら見つからない。もっとも、平時であれば珍しいことではなかった。セフィーロの城は、人の精神力で作り上げたとは信じられないほど巨大だったし、人一人見つけ出すのも至難の業だったからだ。その上クレフは、国が平和になってからは出歩くことが多いと聞いていた。

ただし、今日は事情が違う。チゼータが炎に包まれ、セフィーロを衝撃波が襲ったのは昨日の夕方の話なのだ。セフィーロに怪我人はおらず、チゼータの民もファーレンに助けられて無事この国に向かっていると聞いてひとまず胸をなでおろしたが、まだ何も解決してはいない。チゼータを襲った禍の正体は何なのか。そして、唯一連絡が取れていないオートザムはどうなったのか。ひとまずは、二日後に到着するファーレン・チゼータの船を待つほかないが、待つ間にもすることは山ほどあった。まず、チゼータの民の居住区を確保しなければならない。食料はどうするのか、多数出ているという怪我人の治療をどのように行うか――

いつもなら、クレフが出ずっぱりで指示をするところだった。しかし彼は不在で行方も分からず、結果的に残った者たちであれこれと話し合い、なんとか体制を整えようとしていた。こんなのはクレフらしくないと思う。でも、海にはひとつ確信していることがあった。「クレフは、どんなことであれ、理由のない行動はしない」と。

その時どこかで、がしゃん、と鎧が音を立てた。今、この城内で鎧をまとっているのは、ラファーガだけだ。海の足は、自然とそちらに向いた。ほどなく、ラファーガは見つかった。庭園を横切るところだった彼は、海の姿を見つけるとすぐに歩み寄ってきた。
「こんにちは、ラファーガ。……カルディナは?」
「眠った」
ラファーガの答えは簡潔だったが、その言い方に家族に対するような労りが感じられた。
「あの衝撃波の直後は沈み込んで口もきけなかったがな。チゼータに死者が出ておらず、全員セフィーロに向かっていると聞いてから、元気を少しずつ取り戻した。今は少しだが食事を口にして眠っている。……祖国があのような状態なのだ。ショックを受けても無理はないだろう」
「……そうよね」
「お前は大丈夫か?」
尋ねられて、海はこくりと頷いた。
「光とランティスがチゼータに残ったって、船上のタータから聞いた時は倒れそうになったけど。あの二人なら、心配いらないって思うようにしてるわ」
「……あの男は、実力は本物だ。ヒカルもセフィーロの最後の『柱』。必ず無事に帰ってくる」
ラファーガが無骨なりに、海をなぐさめてくれようとしているのが分かった。思わず涙ぐみそうになり、海は慌てて視線を逸らした。昨夜のパニックから立ち直りきれていないのは海も同じだった。

海はわざと、元気な声を張り上げた。
「光や風が帰ってきた時のために、お菓子を作らなきゃね! まあ、風だって二日後だから急がなくていいんだけど」
「そのことだが」
ラファーガが口調を改めた。心なしか、声を低めて続ける。
「フウはまだ戻ってはいないな?」
ええ、と海はきょとんとして頷いた。
「だって、船から連絡が来たじゃない。チゼータとファーレンの船がセフィーロに着くのは二日後だって。風はファーレンの船の上よ」
「……そうだな。やはり見間違いだろうな」
「え?」
ラファーガの言葉に、海は目を見開いた。
「どういうこと? 誰か、セフィーロで風を見たの?」
ラファーガはしばらくためらった。確度の低い話をするのは気が進まなかったのだろう。しかし、海が続きを求めるように見上げると、仕方なさそうに話しだした。

「今日、居住区を回って住人の無事を確認していた時に聞いたのだ。今朝、セフィーロ城からほど近い崖の上で、住人の一人が、ある少女の姿を見たと。栗色の肩ほどの髪で、視力を矯正する、メガネ、というのか―― をかけていたらしい。その少女の前には、昨日の衝撃波で深い傷を負った獣がいて、背後の崖も深くえぐり取られていた。少女が口元で何かを唱えると一陣の風が吹いて、その獣の傷が一瞬で治ったというのだ。同時に、背後のえぐられた崖から一斉に若芽が芽吹くのを見たと」
「……『癒しの風』?」
「ああ、私もそう思った。その上、その住人はフウを見たことがあると前置きしたうえで、『あの少女はフウにそっくりだった』と断言した。私はその場にさっき、行って来たのだ。獣はもういなかったが、確かに生々しくえぐれた崖は新しい緑に覆われていた。あんな若芽は一晩のうちに生えない」
ラファーガと海は、顔を見合せたまま、黙り込んでしまった。仮に風に似た少女がセフィーロに他にいたとして、仮に魔法が使えたとしても、「眼鏡をかけていた」というのが決定的だった。セフィーロに眼鏡は存在しないためだ。

しばらく考えていたが、海は首を横に振った。
「それでも、風じゃないわ。風は今宇宙にいるし、万が一、何かあって先に戻って来たなら、真っ先にお城に戻って報告するはずだもの。それに……『癒しの風』は、傷ついた生き物は治すけど、植物を生やしたりはできないはずよ。似てるけれど、それは『癒しの風』じゃないわ」
「……そうか。全く、次々と謎が現れるな」
ラファーガはため息をついた。
「ねえ、ラファーガ。その崖に、案内してくれる?」
「かまわんが、道は険しいぞ」
海はこくりと頷いた。光はチゼータで戦っている。風もチゼータの船で傷ついた人を治しているはずだ。海も、どんなことでもいい、何かをしていたかった。

32につづく

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