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レイアース二次小説置き場 (Last One)

「魔法騎士レイアース」クレフ中心の長編小説を置いてます。

2020.01.24
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2012.11.27
「オートザムに、何かあったんですね」

つづきはこちら からどうぞ。

――

風とフェリオがセフィーロ城に戻って来た時、まだ日は天頂から少し傾いたところだった。波打ち際で、セフィーロとチゼータの子供たちが入り混じって遊んでいるのを見て、風は思わず微笑んだ。チゼータの子供たちが、寄せては返す波から逃げたり追いかけたりする姿は、肌の色こそ違っていてもセフィーロの子供と変わりない。
「なんやこの海! すっごい深いで」
「え、ここは波打ち際だよ? まだ。本当の海はもっともっと深いよ」
「えー、なんでやの?」
「なぜって言われても……どうしてもだよ」
子供たちの噛みあわない会話が聞こえてくる。どうやらチゼータの海は、セフィーロよりもよほど浅いらしい。小さな国だから、当然かもしれないけれど。

「大丈夫でしょうか、子供たちだけで……」
「心配ないさ、あっちにプレセアとカルディナがいるから」
フェリオが指差した方を見ると、確かに見慣れた二人が、海からほど近い木の下でのんびりと話していた。
「ちょい、あんたら! あんまり深い方行ったらあかんで!」
二人だけの会話に夢中になっているようでいて、ちゃんと子供たちのほうも見ている。声を張り上げている姿は、数日前まで寝込むほど元気をなくしていたのと同一人物とは思えない。帰れる故郷を無くしたことに一時は絶望したものの、今は、はるばる逃れてきた同郷人を助けるのに生きがいを感じているようだった。
「玉座の間に行こう。今日会った魔物のことをお伝えしないとな」
「ええ」
当たり前のように答えて、ふと風は違和感をもった。「こちらの世界」は風にとって第二の世界で、第一の世界は東京だったはずなのに。何だかもう、セフィーロにいるのが日常のようになっている。こうやって、少しずつ東京を忘れて行ったら……その時、風は妙に背中が寒いような気持ちになった。


***


玉座の前に行く途中で、フェリオはイーグルの寝室に立ち寄った。どうやらこれはフェリオの習慣らしく、通りすがる時にはいつもイーグルに一声かけて、何か頼みごとはないか聞いているようだ。
「イーグル! 元気か?」
「はい、元気に寝ていますよ」
フェリオが声をかけると、イーグルはいつものようにベッドから返事を寄こした。ベッドの上半身の部分が、ほんの少しだけ起こされている。両手の指をゆったりと組み合わせている姿は、今眼を開けてもおかしくないように思えた。イーグルの隣のべッドには、眠り続けるザズの姿があった。

風は、笑顔を見せるフェリオとイーグルの横顔を見つめた。二人とも、王家に生まれた、ただ一人の男性という立場が共通しているが、受ける印象が全く違う。フェリオは剣を手に森を駆けまわる姿が似合うが、イーグルは静かに読書している姿が似合う。その上、かつては攻められる側と攻める側という真逆の立場にいた二人だが、意外と気が合うらしくよく長話をしていた。年齢はイーグルの方が上だが、話している様子は対等に見える。やはり、王の子供という立場が同じ分、分かり合う部分があるのだろうか。

静かに寝息を立てているザズに視線を移す。体に傷はないのに、4日間も目が醒めないなんて、一体何があったんだろう。これ以上起きないのは、本人の栄養状態を考えてもよくない。無理にでも起こしたほうがいいのではないか、と思った時、そよ風が庭から吹いてきた。暖かなその風は、桜に似た花びらを運んできた。ちらほらと散る花びらのうち一枚が、ザズの頬にハラリと落ちた。その、少し日焼けした頬を滑り、音もなく枕元に落ちる。

その途端、ザズが両目をカッと見開いて、電流でも流されたように撥ね起きた。
「今日は何日だ!」
開口一番にそう言った彼に驚いたのは、風だけではなかった。フェリオはのけぞり、イーグルさえも驚いた顔で会話を止めた。ザズは血相を変えて、周囲を見回した。
「あれから一体何日経ったんだ?」
「『あれ』というのは、チゼータ受難のことですか? だとすれば、四日ですよ」
さすがというべきか、一番初めに落ち着きを取り戻したのはイーグルだった。ザズは血走った目でイーグルを見やった。そして、いつもと変わらず落ちついた物腰で眼を閉じているイーグルを数秒間見つめて、ふう、と大きく息をついた。ほっとした様子が、全身から感じ取れた。
「……イーグル、よかったぁ……。こんなにイーグルに会ってほっとしたの、初めてだ」
「どういう意味ですか」
イーグルは軽い調子で言ったが、すぐに表情を引き締めた。
「オートザムに、何かあったんですね」


ザズは一度口を開いたが、すぐに閉じた。何から話していいか、考えているようだった。
「順番は何でもいい。とにかくあったことを話してくれ」
傍にあった椅子の一つを風に薦め、フェリオはその隣に座りながら言った。ザズは、こくりと頷いた。
「大変なんだ。オートザムの精神エネルギーシステムは後、11日しか持たない。チゼータからの衝撃波を、とっさにバリアを張って防いだからだ……誰も、こんなことが起こるなんて夢にも思ってなかった。そんな状態なのに、大統領は12隻の戦艦をセフィーロに向かわせてるんだ。このままじゃ下手したら、チゼータだけじゃない。セフィーロもオートザムも大変なことになるぜ」
イーグルは全く動揺しているようには見えなかった。風にはまるで、もともとそれを予想していたかのように思えた。
「オートザムが……セフィーロを? 待て。オートザムからセフィーロへの『道』は、通じてるのか?」
「僕が通った道は、記録されていますから。ここまで来ることは可能です」
イーグルが静かに答える。フェリオは対照的に、拳をぎゅっと握りしめた。
「冗談じゃない。チゼータがあんなことになった今、他の国が争ってる場合じゃないのに」

セフィーロとオートザムが正面衝突すれば、どちらも無傷ですまないことはわかっていた。そして風には、戦艦を持っているオートザムが圧倒的に有利なように感じた。何しろセフィーロには今、戦艦と呼べる物もなければ、魔神ももうない。ただし、ザガートやエメロード姫が精神エネルギーで魔神を創り上げたように、その気になれば戦艦や魔神を創ることは可能なのかもしれなかった。
―― あの『禁術』をクレフさんが使えば……
そこまで考えて、風は考えを打ち消した。絶対に二度と使わないと言ったクレフの声を、風もはっきりと聞いていた。

「……ここにはイーグルさんもいるのに」
風は唇を噛んだ。オートザムの大統領がイーグルの父親だということは知っていた。大統領は、息子のいる国を戦艦で攻めて、何も思わないのだろうか。風の常識では、親が子を攻撃するなど理解の外だった。
イーグルは微笑んだまま、風の言葉には何も答えなかった。
「一体どうして、オートザムはセフィーロを攻めるんですか。止めることはできないんですの……?」
残り11日しか、国の寿命がないという緊急事態。オートザムからセフィーロの距離を考えれば、もういつ、戦艦がセフィーロに着いてもおかしくないはずだった。なぜ、自国の存亡の危機に他国を攻めるのか。そこまで考えて、風はハッとした。その理由は、その他国に在る「何か」が、オートザムの危機を救い得るからか。少なくともこの状況で、国の存続を目的としない行動をするとは到底思えない。

ザズは眉間に掌を当てた。いつも快活な彼が、こんな途方に暮れるのを見るのは風には初めてだった。
「ジェオは捕まっちまったみたいだし、戦艦は差し押さえられるし。軍の奴らがいきなり乗り込んできて、乗員達を次々拘束し始めたから。俺までつかまったらお終いだと思って、夢中でFTOのところまで逃げたんだ。イーグルに知らせなきゃと思って……」
「それはいつの話ですか?」
イーグルが口を挟んだ。
「チゼータがあんなことになる二日前だ」
「ということは、その時はまだ、精神エネルギーの枯渇は起きていなかったわけですね。一体、脱出後の情報はどうやって入手していたんですか?」
確かにそうだ、と風はイーグルの話を聞きながら感心した。目が覚めたばかりで要領を得ないところのあるザズの話を、ちゃんと時系列順に並べて考えている。

「FTOの通信機が生きてたんだ。軍に流れる情報は全部だだ漏れだったから。……どうして今、セフィーロを侵攻するのか、その理由も聞いた。セフィーロにはオートザムが当分暮らしていけるだけの『精神エネルギー』がある。それを奪うほかにオートザムが生き延びる術はないって。軍は、必死になっているんだ。『セフィーロで最高位の魔導師、導師クレフを拘束せよ』。それがオートザム軍に下された指示だった」
がたん、とドアの所から音がして、皆ドアの方を振り向いた。風もびくりと肩が震えた。それほどザズの話に集中していたのだ。皆の視線の先には、怯えた眼をした少女が立ちすくんでいた。
「……海さん」
海は風の言葉にも答えず、ドアの取っ手にすがるようにつかまっている。その視線が背後に流れた。見なれた杖が覗いた。
「……クレフさん、ラファーガさん……」
今のザズの言葉が耳に入ったのは間違いないだろう。青ざめた海と、険しい顔をしたラファーガの間に挟まれ、クレフはただ一人、落ちついた顔でその場に立っていた。

38につづく

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