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レイアース二次小説置き場 (Last One)

「魔法騎士レイアース」クレフ中心の長編小説を置いてます。

2020.01.24
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2012.11.27
その場の全員の視線が、自然とクレフに集まった。

つづきはこちら からどうぞ。

――

「どういうこと?」
海の声が、静まり返った部屋に響いた。その声は固かったが、よく聞けば動揺に震えていた。
「どうして、オートザムはクレフを捕まえようとするの? どんな理由があって、」
「ウミ」
クレフが下から海の袖を引いたが、彼女は止まらなかった。
「答えて!」
大声が弾け、ザズは俯いた。
「ザズは危機を伝えるために、ここまで辿りついたんです。ザズを責めないでください」
イーグルがザズを庇った。拳をぎゅっと握りしめていた海は、すぐにハッと我に返った表情になった。
「……ごめんなさい。ザズが悪いわけじゃないのは分かってるのに」
風は海に歩みより、その肩に手を置いた。海がどうして感情をこんなに波立たせるのか、風は知っている。気持ちを落ち着かせてあげたいが、こんな時にどう言ったらいいか思い浮かばない自分がもどかしかった。イーグルはいいえ、と微笑む。
「あなたがザズをどれほど心配してくれていたか、僕は知っていますからね」そう言うと、すぐにザズに顔を向けた。「でも、ウミの言う通りです。ここにいる全員が、どうして導師クレフが狙われるのか、理由を知るべきです」

ザズはこくりと頷いた。
「……導師クレフが、ソアラ……妹にくれたお土産の『セフィーロの大気』。あれがきっかけだったんだ。オートザムのエネルギーシステムがブラックアウトした直後、なぜか『あれ』が弾けた。その時に放たれた精神エネルギーは、オートザム中心部の3日分のエネルギー量と同じだったらしい。だから、導師クレフならオートザムを助けられる。そう考えたのが、ひとつだと思う」
「他にもあるの?」
海の言葉に、ザズはしばらく言葉をためらった。
「俺には、到底信じられないんだけど」と前置きしてから続けた。「導師クレフに、オートザムを含む周辺国を滅ぼす力があるっていうんだ」
「だから、オートザムには大義があるというのか?」ラファーガが声を荒げた。「到底信じられぬ。自らを正当化したいだけだろう、オートザムは」

「……『禁術』のことが漏れたのでしょうか」
風は顎に指を置いて言った。『禁術』は、言わば不死の軍隊。策略に使われたことで、国々に滅亡の危機をもたらしたという話は、まだ生々しく風の耳に残っている。
「『禁術』?」
ザズは眼を丸くした。
「導師にだけ使える『魔法』だそうです。……教え子にあたる方を『コピー』することができると」
風は、背後にいるクレフを気にして言葉を止めた。一体どうして、彼は何も言わないのだろう? 風の言葉に、うぅん、とザズは首をひねった。そして、小さな声で、それは違うはずだ、と言い、言いにくそうに続けた。
「俺にも詳しくは分からないんだ。ただ、そういうレベルじゃないと思う。チゼータを滅亡させた災害の原因が、『導師』にある、ていう言い方だった……」
その場の全員のどよめきが、ザズの口を止めた。ザズもこれ以上言葉をつづけたくはなかったらしく、そのまま黙り込んでしまった。
「……馬鹿な!」
フェリオが吐き捨て、ラファーガは天を仰いだ。
「……この場に、チゼータの人達がいなくてよかったわ。ひどすぎる」
海が唇を噛んだ。

「一体、情報ソースはどこなんですか?」
イーグルの問いに、ザズは頭を振りながら答えた。
「チゼータの『預言者』が持ち込んだ古文書に書いてあったらしいんだ。ええと、名前はなんだったっけ」
「は?」
フェリオが気が抜けた声を出すのと、海の驚きの声が重なった。
「マスターナって言う胡散臭い男?」
「そうだ! 確かそういう名前だった」
風は、顔色を無くした海が気がかりだった。フェリオが、はっ、と声を漏らした。
「何かと思えば、占い師だろ? オートザムみたいな機械化された国が、なんでそんなの信じるんだ」
「――でも、マスターナは『チゼータの滅亡』を預言したって」
「まさか。後なら何とでもいえるぜ」
「私……」
ザズとフェリオの会話を遮ったのは、海だった。彼女は、言うか言うまいか戸惑っているようだった。その時、穏やかな声が海に続いた。
「マスターナという男に、海と私はセフィーロで会ったことがある。海によれば、その男は、チゼータに帰れと言った海に対して、『チゼータにいては危険だ。どうせ、セフィーロに来ることになる』と返したらしい。チゼータ受難の数日前のことだ」
今の今までずっと黙っていたクレフだった。口調は穏やかそのものだったが、その場の全員を黙りこませる衝撃的な一言だった。

「……じゃあ。そのマスターナさんという方は、チゼータが難を受けた後、セフィーロに避難する事まで、予言していたということですの?」
どうしてそんなことをクレフが言うのだろう、という気持ちの方が風には強かった。マスターナの預言が当たると言うなら、クレフについての彼の言葉も事実の可能性が高くなる。
「全く、混乱させる方ですね、そのマスターナという人は……それに、忘れないでください。大統領は、決して理由のない行動はしない人物です」
イーグルは、自分の父親を赤の他人のように口にした。
「大統領は、FTOがセフィーロに向けて脱走したことを知っていたはずです。当然、軍への機密情報は流れないよう通信を切断するはずなのに、そうしなかった。その理由は二つでしょう。一つは、導師クレフへのメッセージ。もうひとつはザズ、それを知ったあなたが、導師クレフを説得するのを期待しているからです。あなたの家族は、オートザムにいますからね」
「……俺は何も言わない。言うもんか」
ザズは、俯いたままそう言った。彼が、心の中で戦っているのがよく分かった。一方的に攻撃を仕掛けるオートザムに非があることは明らかで、ザズにはセフィーロとの間に信頼関係もある。それでも、祖国が滅亡するかどうかという瀬戸際で、苦しむのも当然だと思う。家族が向こうにいるならなおのことだ。妹への土産をクレフからもらったザズが、嬉しそうに微笑んでいた姿を、風は思い出した。切なさが、ぐっと胸にこみ上げた。

チゼータの受難、そこから派生したオートザムの危機。そして今、セフィーロにまで戦禍が広がろうとしている。ファーレンも大きな打撃を受けた。何か、人為を越えた大いなる『意志』を感じて風はぞっとした。一体どうして、オートザムはこれを『導師』が引き起こしたと考えたのだろう。『禁術』以外にも、『導師』には隠された力があるのだろうか。ただ、これだけは言える。クレフが、自ら望んでチゼータを滅ぼすなどということは、絶対にないと。

その場の全員の視線が、自然とクレフに集まった。自分が台風の目になっているというのに、どうしてほとんど口を効かずにいるのか、言葉にはしないが皆不思議に思っているに違いなかった。驚き慌てる周囲をよそに、彼だけが落ち着き払っている。クレフは、皆の視線を感じると、少し肩をすくめた。
「どうせならあの時、お前と一緒にオートザムに行けば良かったな。イーグル」
「……逆でしょう、導師クレフ。行ったら大変なことになっていましたよ」
あのイーグルが、呆れている。「あの時」というのが何なのか風には分からないが、二人は、オートザムへ行こうとしたことがあったのだろうか。
「オートザムに行くなど、とんでもない。あなたを拘束する事は、セフィーロに対する冒涜でもある。絶対に許せません」
ラファーガの眼光が鋭い。海は、対照的に心配そうな顔をして、クレフを見下ろした。
「……ね、クレフ。オートザムに行ったりしないわよね?」
クレフは、その場の全員に視線を順番に移した。ぴんと張り詰めた緊張が、その場を支配した。

「残念だが、私にはオートザムを救う力はない」
クレフは、静かに、しかしはっきりと言い切った。ザズが目を閉じるのを、風は眼の端に捉えた。
「私の精神エネルギーを使えば、ある程度持たせることは可能だ。しかし永遠に精神エネルギーを放出する事ができない以上、時間の問題に変わりはない。それに……私には、私の役割がある。今オートザムに行くわけにはいかないのだ」

海がそっと息をつきながらも、気遣わしげにザズとイーグルを見やる。風は、クレフの言葉は正しいと思いながらも、かすかな違和感を感じずにはいられなかった。ここまではっきりと、彼がオートザムへの助力を拒むとは思っていなかったのだ。そういって仲間を安心させて、独りオートザムに向かうつもりなのかもしれない、という考えがちらりと胸を掠めた。しかし風たちを見つめたクレフの瞳は誠実そのもので、とても嘘をついているようには見えなかった。
「……ザズ」しばらくして、イーグルが口を開いた。「動けますか?」
「もちろん」
ザズは頷いた。
「FTO、壊れてしまっていますよね。整備できますか?」
「……え」
顔を上げたザズに、イーグルははっきりと答えた。
「僕も、いよいよ寝ている場合ではなくなってきましたから」
一拍の間があった。
「俺はメカニックだぜ。任せてくれ」
ザズは眼を覚ましてから初めて、笑った。

39 につづく

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