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レイアース二次小説置き場 (Last One)

「魔法騎士レイアース」クレフ中心の長編小説を置いてます。

2020.01.24
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2012.10.04
「ランティスは、日に一度は必ずイーグルの部屋を訪れる。」

本文は、「つづきはこちら」からどうぞ。

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「……悪かったな、イーグル。話の邪魔をした」
立ち去るクレフの足音を聞きながら、ランティスが詫びた。淡々とした口調だが、やり取りに慣れているイーグルには、ランティスが心から申し訳ないと思っているのが分かる。
「いいえ。いいんです。ヒカルたち三人ともが一緒に空から降ってきたら、あなたの精獣で受け止めるのは大変そうですし」
ランティスの精獣は猛々しい雄馬の姿をしているが、さすがに4人は乗れないだろう。
「導師は『フューラ』を召喚できるからな」
「『フューラ』?」
「飛び魚に似た巨大な精獣で、空を飛ぶ」
巨大な魚が空を飛んでいる姿を想像して、思わずイーグルは笑った。間違っても攻撃力は強くなさそうだ。

ランティスが扉を閉め、部屋に入ってくる足音がした。
ランティスは、日に必ず一度はイーグルの元を訪れる。本を読んでいたり、剣の手入れをしたり、眠っていたりと自分の好きなことをして、好きな時に帰っていく。基本的に、無言だ。夢から意識が浮上して、ふと気づくと部屋にいることも珍しくない。かすかな衣擦れやページを繰る音で、ランティスがいると気づく。それは何ともいえず、心やすらぐひと時だった。

ランティスは、ベッド脇に立ち、イーグルを見下ろした。
「何を話していたんだ?」
「あのかたに遊んでいただいていただけです」
「またか。あまり導師を困らせるな」
かすかにため息をついたようだ。どうやら、とっくに気づかれていたらしい。

「導師クレフは、本当にあなたの師なんですか?」
「ああ。昔、話した通りだ。兄とともに魔法を教わった」
ランティスの声が、懐かしさを帯びた。今は亡き兄に対してか、恩師に対してか、その声音はとてもあたたかい。きっと両方だろう。
「僕は、あなたの師なら、どれほどの攻撃力があるのかと、以前は警戒していましたよ」
ファイターとしてのランティスの腕前は、彼にとって本職ではないにも関わらず、イーグルに勝るとも劣らない。だから、その師が幼い少年の姿だと知った時は驚いた。
「導師は敵に対して、自分や周囲を護ることはしても、やむを得ない時を除いて攻撃しない。使うのも、初級の攻撃魔法に限られている」
「……あの戦いの時も、導師は出撃せず、城の護りに徹しておられたようですしね」
ランティスがベッド脇の椅子に腰を下ろす音を聞きながら、イーグルは思っていたことを口に出した。
セフィーロに侵攻すると決めた時、最も警戒したのが、セフィーロに帰国したはずのランティスと、その師だと聞いていたクレフの二人だった。魔法騎士は消滅したと聞かされていたから、恐れるとすれば「魔法」だと思っていた。

ランティスの答えは簡潔だった。
「導師はあの時、城の中央で、自分の体を楔に、城の周囲にバリアを張り続けていた。城から離れられる状態ではなかった」
「ということは、導師クレフを攻撃すれば、あのバリアは解けていたということですか? ……いや、この議論は無駄ですね」
イーグルは自ら話を中断した。確かにクレフを攻撃すればバリアは破れただろうが、そもそもバリアを破らないとクレフを攻撃できない。
「攻撃しても、一戦艦ではあのバリアに傷もつけられない」
「最高の防御力を持てば、攻撃の必要はない、ということですか」
「そうだな」
ランティスは一瞬言葉を切る。イーグルを見下ろす視線を感じた。
「ただし。『攻撃しない』ことと、『攻撃力がない』ことは違う」
「……そうですね」
クレフにも三年前のイーグルのように、自らの意志で剣を取り、己の願いのために戦った時代があったのだろうか。しかし、イーグルにはどうしても想像ができなかった。

「……僕は、ずっと不思議でした。導師クレフほど心の強い方がどうして、セフィーロの『柱』にならなかったのかと。でも、最近分かりました。ヒカルと僕が『柱』になれるかどうかを分けたのは、『自分を大切に思っているかどうか』です。自分を大切にできないものは、自分の心から出た『願い』もまた、大切にはできませんから。……クレフは、一輪の花のためにも命を捨てるような方ですね。己のために、何かを願うこともないのでしょう。ある意味、もっとも『柱』からは遠い人物です」

『願い』とは、極めて利己的な感情だ。世の中の背景や、人々の思い全てのためにと公明正大に考えていれば、願いなど持つこともできないだろう。
イーグル自身、ランティスを死なせたくない、ただそれだけの『願い』のために、『柱』を目指していた。その結果、オートザムの破滅を救う手立てが失われ、セフィーロが住めない場所となるのは当然わかっていた。ランティスの命のために、二つの国を滅ぼすつもりだったのか、と言われても全く否定できない。善悪に関係なく、誰よりも強い意志を持つ者が全てを決める国。タトラが以前言った通り、セフィーロは危険な国に違いない。誰よりも強い意志は、狂気と紙一重だ。

ランティスはしばらく黙っていたが、やがて口を開いた。
「俺はあの人の生き方から、最も貴いのは『不動の心』だと学んだ。それは、この国を動かす『願い』の強さとは別のもの、例えるなら静と動だ。性質こそ逆だが、どちらもこの国の存続に欠かせない『柱』だった。あの人はセフィーロそのもの。『柱』制度が崩壊しても微動だにしない、もうひとつの『柱』だ」
「……二つの『柱』。なるほど、だから『セフィーロ』は危険な国でありながら、今まで滅びずに来たんですね」
「いや」
ランティスは静かに言った。
「滅びたことがあるそうだ。導師クレフがそう言っていた」
「……え?」
初耳だった。聞き返そうとした時、ランティスが身じろぎする気配がした。

「ヒカルたちが、セフィーロについたようだ。三人の気配がセフィーロ上空に現れた」
ランティスが不意に話題を変えた。
「よく、分かりますね」
セフィーロの人々が言う「気配」を、イーグルは全く読みとれない。はるか離れているはずの人の存在を、どうやったら感知できるのか、理解の外だ。ランティスは聞き取れないほどの小声で「魔法」を唱えた。数秒後、突然元気なヒカルの声が部屋中に広がった。
―― 「フューラ、久しぶりだ! ありがとう、助けてくれて!」
「上空の様子を、壁に映し出しているのだ」
見えないイーグルのためにランティスが朴訥な口調で説明を加える。
「フューラの背中に、ヒカル・ウミ・フウが落ちたところだ」

実際は、海と風の大声に掻き消されて、ランティスの声は半分も聞き取れなかった。
―― 「いっつも、すごいタイミングいいわよね! フューラ偉いっ!」
―― 「来ていただけて良かったですわ。そうでなければ、わたくしたちは今頃……海の藻屑でしたから」
―― 「……縁起でもないこと、縁起でもない口調で言わないでよ、風~」
二人の会話の裏で、ごろごろ、と猫が喉を鳴らすような音がしている。
「なんですか? この音」
イーグルが尋ねる。
「フューラが機嫌が良い時、この声を出す」
「魚なのに?」
「魚ではない、精獣だ。……そろそろ、城内につくところだ。導師とプレセアが迎えに出ている」
いったい魚のどこからそんな音が、とイーグルが考えている時にも、場面は移っている。

―― 「クレフー! プレセア!」
―― 「お前たち、もう少し登場のしかたを何とかならんのか? せめて陸上に現れてくれ。おちおち眠れないではないか」
三人娘の挨拶に、クレフが苦り切った声で説教を垂れている。
―― 「大丈夫よ、夜は来ないから」
―― 「そういう問題ではない!」
海の言葉に、クレフが突っ込んでいる。その隣では、プレセアと少女たちがにぎやかに挨拶を交わしている。
―― 「本当にごめん、クレフ。最近ちゃんと城内に出れるようになってたんだけど、わたしたちみんな学校の試験の後で、あまり寝てなかったから、うまくコントロールできなかったのかも」
しゅんとした口調で謝ったのは光だ。
―― 「まあいい。今回は、ランティスが早めに教えてくれたから助かった」
謝られると、クレフとしてもこれ以上言い募ることはできないらしい。
―― 「クレフさん、光さんにはいつもお優しいですわね」
―― 「ちょっと風。それってわたしには冷たいってこと?」
―― 「ランティス、今日はいるのか?」
はずんだ光の声が二人の会話を遮り、聞いているイーグルは少しだけ嫉妬を感じる。
―― 「ああ、この間は短い旅に出て不在だったな。今日はいる」

「迎えに行ってあげないんですか? ランティス。お待ちかねなようですよ」
本当はすぐに出て行きたいのに、そうできないのがランティスのランティスたるゆえんだと思う。中々人に対する好意を口にしないが、案外こういうタイプが、心に決めるとストレートに愛を口にするのかもしれない。
「イーグル」
「目も開けられない僕が、あなたの背中を押そうとしてるんですよ。行ってください」
かすかにランティスが笑う気配がした。きっと優しい顔をしているのだろう。
「ヒカルは、お前に会うのをいつも楽しみにしている。後で連れてくる」
「ええ、待っています」
ランティスは、立ち去り際にそっと自分の掌をイーグルのそれに重ねた。そして、さっと身をひるがえすと、部屋を後にした。
これからほどなく現れるに違いないヒカルを思い、イーグルはひとり微笑んだ。

6 へつづく

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