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レイアース二次小説置き場 (Last One)

「魔法騎士レイアース」クレフ中心の長編小説を置いてます。

2020.01.20
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2012.12.30
「導師クレフは今や、この世界を滅ぼしうる危険人物と我々は判断している。」

本文は、「つづきはこちら」からどうぞ。

――――――――――――――――――

セフィーロはもはや、完全に包囲されていた。セフィーロで戦える者たちは、セフィーロの城の1階にある地上門に集まっていた。魔導師、召喚師、剣師など多彩な顔ぶれだったが、皆の表情は等しく、混乱していて、統率も取れていなかった。
「セフィーロとオートザムは友好関係を築いていたはずだ。なぜ、こんなことに……!」
「導師は! 導師クレフはいったいどこにおられるのだ!」
彼ら彼女らの呼び交わす声で、混乱の源は明らかだった。まったくオートザムの襲撃は予想していなかった上に、非常事態には必ず中心にいたクレフが姿を現さないことで、混乱に拍車がかかっていた。

「落ちつけ!」
その場に響き渡る太い声に、皆が言葉を止めた。しん、と静まりかえった中に、鎧を身にまとい、隆々とした腕の筋肉を露わにしたラファーガが、大股で城の出口に歩み寄った。そして、城にずらりと銃口を向けた戦艦をにらみ上げた。この事態にも、動揺は見られない。その隣には、同じく鎧をまとったフェリオの姿があった。
「すぐ攻撃をしてこないということは、要求があるはずだ」
「しかしラファーガ殿、話を聞こうにも、こちら側の代表者、導師クレフがいらっしゃらないのでは――」

絹を引き裂くような女の悲鳴が、その場に鋭く通った。振り返ったフェリオが、地面に崩れ落ちた女に駆け寄る。
「プレセア、大丈夫か!」
「すみません、フェリオ……私はあの人を、止められなかった」
フェリオとプレセアの付き合いは決して短くはないが、いつも気丈な彼女がこんな風に取り乱すのを見るのは、初めてだった。

「どういうことだ? あの人って……導師クレフのことか?」
「ええ」プレセアは、涙をぬぐってうなずいた。「もう、セフィーロにはいらっしゃらないわ。気配をまったく感じない」
「なんだって?」
その場の全員が一瞬静まり返り、直後、大きなどよめきが上がった。
「いったいどういうことだ? この非常事態におられないなどと……」
「導師クレフはもともと何かお気づきだったのではないか? そしてセフィーロを見捨てられたのか……」
「そういえば、ここ数日の導師の行動はおかしかったのではないか?」
「やめろ!!」
どよめきだした皆を、一喝したのはフェリオだった。今までの彼とは想像がつかないほど、厳しい横顔をしていた。
「根拠もない発言をしてなんになる! 今のこの局面を切り抜ける方法を考えるのが先だろう!」
「しかし、代表者は……」
「俺が務める」フェリオは言い切った。「先々代の『柱』の息子、そしてエメロード姫の弟だ。不足はないだろう」
こんなところで、とフェリオは唇を噛みしめていた。エメロード姫が命を懸けて守ったこの国が、再生からまだ三年だというのに、また危機を迎えてたまるものか。

「フェリオ」
人ごみの中で、ぎゅっ、と手を握られた。はっ、として見下ろすと、混乱の中ではぐれてしまっていた風の姿があった。
「フウ!」
いつも無理をしがちなフェリオを、いつも気遣っている風のことだ。無理をしないで、と心配そうに言われると思っていた。しかし風は、フェリオを見つめて微笑んでいた。
「あなたを信じていますわ」
迷いのない眼差しを向けられて、フェリオの胸はこんな時なのに一度、大きく打った。
「ありがとう」
この人が恋人でいてくれてよかったと、これほど強く思ったのは初めてかもしれない。この人を、たとえ何があっても絶対に傷つけさせたくない。強い『願い』が、フェリオの決意を固めた。

フェリオは風の手を、強く握り返した。そして、肩を震わせているプレセアを見下ろした。
「フウ。プレセアを頼む」
「ええ」
最愛の人に信頼されることが、どれほど力になるか。それを教えてくれた恋人に感謝した。フェリオは風に微笑みかけると、振り向かずに彼女に背中を向けた。

**

めったに身に着けない鎧が、耳障りな音を立てる。城門の外に出たとたんに、銃口を目の前に突き付けられたような圧迫感におそわれる。
―― 全部で8艦か。
数を数える余裕はあった。そのうち4艦の大砲は、すべてセフィーロ城を向いている。これが一斉に火を噴いたらどうなるか、想像するまでもなかった。先日チゼータから襲ってきた衝撃波ほど大規模ではないが、部分的にはそれ以上の被害を受けることが想像できた。

―― 戦闘はできないな。
かつてのセフィーロが、三国に同時に攻め立てられても戦えたのは、魔神によるものが大きい。導師クレフたち、セフィーロの実力者が戦えなかったのは、城の維持に全力を傾けていたからだ。今は、城を維持する必要はないが、魔神もクレフもいない。状況を考えてみても、城を守ることが精いっぱいで、この戦艦をすべて追い払う力はセフィーロの中をどんなに探しても出てこないように思えた。それに、セフィーロには今、国を追われたチゼータの人々と、ファーレンの人々もいるのだ。ここで戦いが起これば、すべての国が戦争に巻き込まれる。平和への道筋は―― 絶たれる。

フェリオは、城の正面につけた戦艦をキッと見上げた。
「俺は、セフィーロの王子、フェリオ。オートザムの戦艦とお見受けする。我々の間には戦闘に値する理由はないはずだ。それなのに、いったい何事だ!?」
「……直々に王子に対応いただけるとは、痛み入る。私は、この戦艦を率いる司令官、ヴォーグと申します。我々の要求はひとつ。導師クレフと話をさせていただきたい」
機械のように抑揚のない、低い男の声が戦艦から聞こえた。その声は、セフィーロ城内にも響き渡るほどの大音響だった。

「導師に、いったい何の用だ?」
クレフの不在は、相手に悟られてはならない。そもそも「いない」と言ったところで、信用されるはずもない。とっさにそう判断したフェリオは、動揺を見せずに言い返した。少し後ろに立ったラファーガが、声を荒げる。
「導師はセフィーロの最高責任者。話がしたければ、まず戦艦を退け、代表者がこの城を正式に訪問するのが筋だろう! 大砲を向け話がしたいなどと、受け入れるはずがなかろう」
もっともな話だ、と隣で聞いていたフェリオも思った。しかしヴォーグが、軽く笑う声が聞こえてきた。
「導師クレフは今や、この世界を滅ぼしうる危険人物と我々は判断している。チゼータ受難の原因は彼にあるとも。一対一で話ができる状況ではない」
「ふざけるな!!」
どよめきがセフィーロの中に広がる前に、フェリオは腹の底から怒鳴っていた。怒りが、勝手に言葉を押し出したといってもよかった。

「お前たちの目的は、導師クレフの精神エネルギーを使って国を長らえることだろう、違うか! 勝手に危険人物に仕立て上げて自分たちを正当化しようなんて、絶対に俺たちは納得しない!」
2日前に目を覚ましたザズの言葉を、フェリオもはっきりと耳にしていた。改めて聞かされて見ると、余計腹が立つ。直接こんな言葉を耳にせずに済んだという意味では、クレフがいなくてよかったと初めて思えた。
「導師クレフを連行するというつもりだろう? ―― そんなことは、絶対に許さない」
力がほしい、とフェリオは心から思った。戦闘になれば勝ち目は薄く、多くの血が流れることはもちろんわかっている。しかしオートザム側は、セフィーロの劣勢を知ったうえで、上から畳み掛けようとしてきている。このセフィーロを守るため、すべての理不尽を打ち砕く力がこの手にあれば―― 。

「なんのために、我らが戦艦を率いてきたか、お分かりのはずだ」
向けられていた大砲のうち一つから、モーター音のような低い音が聞こえ始めた。発射するつもりだ―― 背後にいる大勢の命のことを考え、戦慄が奔った。
「王子、下がられよ」
ラファーガが前に出た。フェリオは首を横に振った。
「王子!」
自分に、この攻撃を防ぐ手段はないのはわかっている。それでも、逃げることはできなかった。

56.につづく

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