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レイアース二次小説置き場 (Last One)

「魔法騎士レイアース」クレフ中心の長編小説を置いてます。

2020.01.20
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2013.01.01
「セフィーロに投降しなさい」

本文は、「つづきはこちら」からどうぞ。

――――――――――――――――――

「豊穣の地、ファーレンから来られた貴女には分からないだろう、オートザムの苦悩が」
ヴォーグの声に、アスカが顔を上げた。その額には、細かい汗が浮かんでいる。指が小刻みに震えていた。「意志の強弱」が幻術の掛けやすさを左右するのであれば、今の司令官からは、迸るほどの「思い」が感じられた。
「確かに、オートザムを疲弊させたのは、先祖代々にわたる我々の所業かもしれぬ。我々が現在、長年傷つけ続けたオートザムの国土から復讐を受けているとしても、ここで亡びるわけにはいかないのです」

自国が亡びそうだからと言って、他国の最高責任者を連行しようとするなど自分勝手にもほどがある。こんな国に共感することなどなにもない―― そのはずなのに。フェリオは唇をかんだ。三年前、セフィーロが滅亡の危機にあった時のことを、思い出してしまうのはなぜだろう。もしもあの時セフィーロが滅びたとして、「『柱』に国のすべてを背負わせ、安穏と暮らしていた報いを受けたのだ」ともしも他国から批判されたら、セフィーロとて一言もないのではないか。片や救われ、片や救いの手を得られずに滅びようとしている。三年前のセフィーロと今のオートザムの違いは、案外それしかないのかもしれない。

「アスカ様!」
チャンアンとサンユンが、倒れかかったアスカを背後から支えた。苦痛にゆがんだアスカの目は、フェリオを捉えていた。
「すまぬ、フェリオ。このままでは――」
アスカの声はかすれていた。

言い終わるよりも前に、正面に位置する戦艦が、ギシギシと船体を軋ませながら動き出した。きらきらと輝く糸のようなものが、何本か垂れ下がっている。
「そこをどけ、ファーレン!」
ヴォーグの声が響き渡る。フェリオはとっさに、アスカの前にかばうように立った。その直後、砲台が火を噴いた。

―― まずい。
確か、あの砲台は地上門に向けられていたはずだ。この体勢でフェリオが避ければ、アスカに当たる。こちらに向かって砲弾が吐き出される瞬間、砲台が一瞬光り、背後に煙が現れるのを、スローモーションのように視界の隅にとらえた。刹那、黒い影が地上から稲妻のような勢いで奔った。影が一瞬、ギラリと金属系の輝きを放つ。

「FTO!」
とっさに、ラファーガが叫んだ。
―― FTO? FTOだって?
確か、ザズが昨日かかりっきりで機体を直していたはずだ。

FTOの右の手首から、目にも止まらない速さで巨大なナイフが出現する。輝きを放っているのはそれだ、とフェリオが気が付くよりも早く、ナイフは空中を一閃していた。直後、中空で目もくらむような輝きとともに、爆発が起こった。
「アスカ!」
反射的に、アスカとサンユン、チャンアンの上に覆いかぶさった。襲ってくるだろうと思っていた砲弾の一撃は、いつになっても来なかった。パラパラといくつかの金属の破片が背中に落ちただけだった。
「砲弾を斬った、のか?」
ラファーガが唖然としている。それを聞いて初めて、フェリオは何が起こったのか理解した。

中空に、FTOの白い背中が光って見えた。こちらに背を向け、戦艦と対峙している。その右手の手首の部分から、2メートルはある巨大な剣が飛び出していた。弧を描くその剣でさっきの砲弾を両断したのか。砲弾のサイズはおそらく1メートルはあり、タイミングを合わせれば理屈上は不可能ではないのだろうが、奇跡的ともいえるスキルだった。
「ザズなのか……?」
ヴォーグが疑いを含んだ声でそう言ったのは、FTOがザズの脱走に使われたからだろう。

違う、とフェリオが思った時、
「あなた方は、前の司令官のことも忘れたんですか?」
気負いのない声が、FTOから聞こえた。
「僕はイーグル・ヴィジョンです。ヴォーグ・モーガンと話がしたい」
「そ、総司令官……あなたは、不治の病で二度と意識が戻らぬと……」
ヴォーグの声がすぐに返した。さっきフェリオに向けたような傲岸さも、アスカに向けたような怒りもなく、作為のない素の声だった。イーグルが前の総司令官、ヴォーグが現司令官ということは、おそらく二人は三年前、上下関係にあったのだろう。
「目が醒めるような事件が立て続けに起きたのでね」
イーグルはおそらく今、目は笑っていないだろう。
「僕を眠らせておいてくれなかったのは、オートザム大統領です。いったい何事ですか? これは」

―― 「フェリオ」
その時、イーグルの声が唐突に頭の中に響いた。フェリオは周囲を見回したが全員、今の声に気付いたようには見えない。おそらく、寝たきりだった時と同じように、テレパシーを使って話しかけているのだろう。イーグルは構わず続けた。
―― 「ゲリラ兵がすでに、地上に展開しているかもしれません。ご注意を」
―― 「わかった」
フェリオはイーグルにそう返すと、ラファーガに目くばせした。

ヴォーグは、イーグルのFTOに向き直った。その船体は、完全にアスカの幻術から抜けきってはいない。ほかの七つの艦はまだ動き出してもいなかった。
「なぜです、総司令官! あなたもかつて、オートザムの危機を救うため、セフィーロへ侵攻したはず。今国の存続の危機に立っているのに、なぜ私たちに武器を向けるのですか」
「僕はもう、総司令官ではありませんよ」
「いいえ。あなたの地位はこの三年間、据え置かれたままです。皆、あなたの復帰をお待ちしていました」
「僕は……」
イーグルは口を開きかけたが、すぐに思い直したように口調を変えた。
「今は、そんな話をしている場合ではありません。導師クレフについて、事実だけを述べましょう。彼は今、セフィーロにはいらっしゃいません」
はっきりとイーグルは言い切った。
「馬鹿な! 最高責任者が国を離れるわけが……」
「離れなければならない理由があります。彼は、チゼータ受難の原因となる『扉』を消滅させるため、チゼータへ向かわれました。それができるのは、歴代の導師だけだと言い置いて」
「しかし、我々は『導師』はチゼータ受難の元凶だと聞かされた」
「それを否定する理由は、彼が『導師クレフ』だというだけで十分ですが、それを言ってもあなた方は理解しないでしょう」
イーグルは少し息をつき、続けた。
「今から導師クレフを追いかけて確保できたとして、セフィーロからチゼータ、チゼータからオートザムへの行程は優に10日を越えます。オートザムが人が住めない国になるまであと9日。もう、間に合いません」
「オートザムは、あなたの祖国ではないですか。心が痛まないのですか!」
感情に高ぶった声で、ヴォーグが怒鳴った。
「僕は事実を口にしているまで」
対照的に、イーグルは冷静に返した。

「セフィーロに投降しなさい」

イーグルは威厳すら感じさせる声で続けた。この男は、大統領の息子なのだとフェリオは思った。相手の反論を許さず、意識ごと飲み込むような迫力をもっている。
「全戦闘力と引き換えに、全国民をセフィーロとファーレンに分散して避難させてほしいと依頼するのです。そして、引き続きオートザムの浄化に、オートザム国民が一丸となり対処すること。それ以外にオートザム国民が生き延びる術はありません」
「しかし……」
ヴォーグはそれきり、絶句した。確かにイーグルの言う通りだ、とフェリオも思った。仮にこの戦いでセフィーロを制圧できたところで、オートザムを救う鍵となり得るクレフは確保できない。チゼータまでクレフを追い掛けたところで、国の滅亡には間に合わない。その上、ファーレンにまで自国に攻め込まれれば、オートザムはもう打つ手がなくなる。国民が生き延びる手段はただひとつ、侵攻をやめ、セフィーロとファーレンに助けを求めるほかないのだ。

その一方で、いったんセフィーロとファーレンに避難し、引き続きオートザム浄化の研究を進めるなら、いつかはオートザムを浄化し戻れる可能性もあるのだ。オートザムが戦うメリットは何もない、フェリオにもそう思えた。

「……あなたは、大統領のご子息でしょう。あの方の本音はよくご存じのはずです」
ヴォーグの返事は力なかった。
「大統領は、オートザムを他国よりも優れた国家だと信じておられる。オートザム国民たる誇りを捨て、他国に投降することなど許さないでしょう」
「馬鹿な……!」
フェリオの声は、思いがけなくその場によく通った。全員の視線が集まるのを感じた。
「国は、国土でできてるわけじゃない。誇りなんていう、感情でできてるものでもない。国民でできてるんだろ? チゼータも国民を第一にしたから、命を繋ぐことができたんだ。オートザムの大統領は、国民の命よりも、そんなものが大事なのかよ?」
「残念ながら」そう口を開いたのは、イーグルだった。自嘲めいた、彼らしくない口調だった。「大統領にとっては、オートザムは優等種族、他国は劣等種族という思考が根底にあるんです。この点については、ヴォーグの言葉のとおりですよ」
「国民が全滅するかどうかの瀬戸際で、そんなこと言ってる場合かよ……」
「セフィーロの王子よ、そういうものです。たった一人の言動が歴史の行き筋を変える」
フェリオの言葉に返したのは、ヴォーグだった。

「あなたは、どうされるんですか」
イーグルのヴォーグに対する問いは、シンプルだった。
「大統領の思惑は、ここまで届きません。大統領にしたがってセフィーロを討ったのちにファーレンに討たれるか、それとも他国に助力を仰ぐか。決めるのはあなたです」
しん、と沈黙がその場に落ちた。セフィーロの誰もが、オートザムの誰もが割って入れない空気が、二人の間に流れていた。

どれくらいの沈黙が落ちたのか、やたら長く感じた時間の後、やがて司令官は低く笑い出した。
「私は、あなたのことを以前から尊敬申し上げていました、イーグル・ヴィジョン総司令官殿。あなたが、大統領であればよいのにと、思ったこともあります」
「司令官……」
「私は軍人です。大統領の命令には逆らえません」
突然、FTOの正面にある艦のすべての砲台が、地上門に向けられた。そして、次々とほかの艦も動き出す。いつの間にアスカの幻術をすべて振り切っていたのか、傍目からはまったくわからなかった。
「ザズ!」
その時、イーグルが鋭く叫んだ。それとほぼ時を同じくして、戦艦のあちこちから煙が上がった。どよめきあわてる軍人たちの声が、外にも漏れてくる。唖然とするフェリオたちの眼前で、ゆっくりと戦艦がかしぎ、海の方向へと落ち始めた。

「油断しましたね、司令官。こちらにオートザム随一のメカニック、ザズがいるのを忘れているなんて。アスカさんの幻術を破ることのみに集中し、裏でハッキングが着々と進んでいるのを見落とした」
「……くそ!!」
苦し紛れに、いくつかの戦艦は砲台を地上門に向けようとしたが、ほぼ完全に制圧された艦は、手足を拘束された人間のように動けないまま落ちてゆく。

もう大丈夫だ、とフェリオが肩の力を抜いた、その時だった。
「来るぞ!」
ラファーガの緊張した声が、その場を貫いた。
「え……」
次の瞬間、偶発的に作動した砲弾が、地上門を直撃した。


58 につづく

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新年から先行き暗くてやーねー……
とりあえず、あけましておめでとうございます! 今年もよろしくおねがいしますmm

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