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レイアース二次小説置き場 (Last One)

「魔法騎士レイアース」クレフ中心の長編小説を置いてます。

2020.01.20
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2012.10.08
―― この『美しい』国に、乾杯。

つづきはこちら からどうぞ。

――

定例の意見交換が終わり、城内から各国の面々が出てきたのは、夕暮れ時が近づいたころだった。砂浜に吹く風は少しだけ涼しくなり、白い砂はピンクに近いオレンジ色に染まっていてなんだか可愛らしい。海が持ってきたケーキを紅茶とともにいただくには、ぴったりの背景に思えた。

談笑しながら出てきたのは、オートザムのジェオとザズ、ファーレンのアスカとサンユン、チャンアン。チゼータのタータとタトラ。そして、セフィーロからはクレフとプレセア、フェリオとラファーガの11名だった。

「光さん。みなさん、出ていらっしゃいましたよ」
ケーキを心待ちにしていた光を思い出し、風は光に声をかける。光は、寝椅子に横になっているイーグルと、砂浜の上に直接腰を下ろしているランティスの間に隠れるようにして、背後の木の幹に背中を持たせかけていた。目をつぶって、表情は自然と微笑んでいる。夕日のあたたかさが心地いいのだろう。まるで、日向ぼっこしている子犬のようで、風もつられて微笑んでしまう。
「光さん?」
眠っているのだろうか。控えめに声をかけてみると、ぱっちりと両目が開いた。そのまま、両手を前に出して、ぴょこんと上半身を起こした。
「ほんと? やったぁ、準備しなきゃね! ……えっと、椅子とテーブルは……砂だから、動かすの大変かなぁ」
ううん、と唸っている光の視線の先で、ケーキが入った大きなバスケットを持った海が、クレフを手招きしている。

「クレフ、椅子とテーブルがないの!」
「……いったい私を何だと思っているのだ」
クレフはあきれ顔だったが、手にした杖を一振りした。すると、ざっと30人分の椅子とテーブルが、まとめて現れた。
といっても、椅子にもテーブルにも足の部分がなく、宙にふわふわと浮かんでいる。
「魔法みたいなのじゃ……」
「魔法です、アスカ様」
思わず感嘆の声をもらしたアスカに、チャンアンが教えている。サンユンが、空中に浮かんだままの椅子やテーブルをせっせと押して配置している。
アスコットがそれを手伝った。

「30人かぁ、もしかしたらちょっとケーキが足りないかも。クッキーが焼ければいいんだけど。クレフ、オーブン出せる?」
全体を見まわしていた海が、クレフに尋ねる。
「おーぶんとは何だ?」
「そっか、この世界にはないのね。これくらいの大きさで、熱くなるの。で、お菓子が焼けるんだけど」
海が両手で空中に長方形を描きながら説明し、クレフは顎に指をおいて考え込んでいる。
ストレートに、あれが欲しいこれが欲しいとはっきり言える海と、呆れつつも大体のことは何とかしてしまうクレフ。風は、この二人のやり取りを見ているのが好きだった。杖をちょっとかざしたクレフが、ちょっと違うと思ったのか動きを止めてまた考えている。あまり料理などしなさそうだから、イメージしにくいものは難しいのかもしれない。クレフが困っていると思ったのだろう、隣にいたプレセアが、胸をどんと叩いた。
「創師の私にお任せください、導師クレフ、ウミ!」
「創ってくれるの?」
「当たり前よ! さあウミ、おーぶんの原料を取ってくるのよ!」
「そこから!?」

やいやいと言いあっている一同を見て、光は楽しそうだ。
「本当に、海ちゃんの周りっていっつも楽しそうだよね!」
「――ジェオに頼んでみてください。あの人、常に艦の中にお菓子を大量に隠してますから」
イーグルの声が突然頭に響く。どうやら、今の会話を全部聞いていたらしい。風が見る限り、寝椅子に悠々と寝そべって両手を組み、ゆったりと眠っているように見える。その右手が不意に動いて、戦艦の方を指した。
「うんっ! 私、聞いてくるね!」
光が素早く立ち上がると、軽い足音を立てて戦闘艦に駆け出した。その後ろ姿を見送りながら、風はイーグルを見やった。
「もう、手が動かせるんですのね」
「ええ、フウ。みなさんが回復を願ってくださっているおかげでね」
「良かったですわ」
微笑んだとき、
「それもかよ!?」
遠い戦艦から、ジェオの大声と、ザズがゲラゲラ笑う声が聞こえてきた。どうやら、お菓子のコレクションが光に見つかったらしい。ほどなく、サンタクロースのようにお菓子を詰め込んだ袋を担いだ光が砂浜を駆けてきた。

「大量♪ 大量♪」
カルディナが袋を受け取り、中身をタータとタトラに見せる。褐色の肌をした三人の娘は、異国の菓子に物珍しそうだ。

セフィーロの面々も次々と砂浜に下り、お茶会の準備がちゃくちゃくと進められている。手伝おうと風が立ち上がった時、ジェオがイーグルのところへ歩いてくるのが目に入った。その表情が、さっきとは打って変わって真面目なもので、風と駆けてきた光の二人は動きを止める。
「どうしたんですか? ジェオ。何かありましたか?」
「今、お前の父君……本国の大統領から連絡が来たぜ。お前と俺宛だ」
小さなモニターを手に持っている。どすっと音を立てて、イーグルの寝椅子の隣に腰を下ろした。眠るように目を閉じていたランティスが、ちらりと二人を見やった。
「何と言っていますか?」
「帰国しろって」
「困りましたね。そう言われても、僕は身動きできませんし……」
「だから、連れ帰るようにと俺に指示が来てる」

起き直ったランティスは、険しい表情をしている。ランティスとイーグルを見比べた光は、不安そうな顔をしている。イーグルはにっこりと笑った。
「心配しないでください、お二人とも。ジェオは、僕が望まないことはしませんよ」
「そう言われても、俺も困るんだけどよ」
大統領とイーグルに挟まれる形になっているジェオは、複雑な表情だ。
「まあ、父君のほうが無理を言ってると俺も思うぜ。お前の病は、医学的には治療不可能だ。意志の世界であるセフィーロでしか治癒の可能性はないし、実際この国で、病気は少しずつ良くなってる。その上、この国じゃ念じるだけで言葉が通じるが、オートザムじゃそうもいかねぇ。……父君は、それを分かってはいるが、単純にお前を心配してるんじゃねぇのか? 何しろ、三年前にオートザムを出て、それきり会ってねぇんだろ。ちょっとくらい顔見せたらどうだ?」
「父は、そういう人ではありませんよ」
にこやかにイーグルは否定し、すぐに続けた。
「眠りから覚めたら、自分の足で一度は帰国しますよ、用事もありますし。ただ、長居はしませんが」
「なんでだよ。お前の国だろ? オートザムは」
「もう、帰る気はありませんよ。僕の国とも思っていません」
「……イーグル」
「というよりも、僕に資格がありません。僕は、オートザムにとって『裏切り者』ですから」
「そんな……!」
光が、ぐっと拳を握りしめた。

「僕の『願い』は、セフィーロの『柱』になり、セフィーロと共に永遠の眠りにつくことでした。オートザムは、セフィーロの『柱システム』を解明して自国を再生させるか、それができなければ移住地としてセフィーロを考えていた。だからこそ、軍費を割いて僕らを送り出したのに、です。もしも僕の『願い』が現実になっていれば、『柱システム』の解明も、移住も不可能になります。オートザムは滅びの道を突き進むほかなかったでしょう」
「でも、そうはならなかった」
光が何度も首を横に振った。
「それは、あなたがいたからですよ、ヒカル。現実にならなかったけれど、僕がオートザムを裏切った事実は変わりません」
「そんなことない」
光はもう一度、きっぱりと言った。
「今のセフィーロは、ここに住んでる全ての人の意志で成り立っているんだ。あなたの意志も、その中に入ってる。『柱』の解明はできなかったけど、みんなが今、オートザムの大気がどうやったら綺麗になるのか考えてる。いざとなったら移住だってできる。状況は、よくなってるとわたしは思う。絶対、だいじょうぶだよ」

だいじょうぶ。そう光が言うと、本当にすべてが問題ないように思えてくるから不思議だ。風は、視線を砂浜に転じた。育ちも考え方も違う人々が協力しあって、テーブルと椅子を並べ、ケーキを皿にもりつけ、紅茶を淹れている。三年前には想像もつかないくらい、全てが良くなった。争っていた四つの国は手を取り合って、今は互いの良いところから学んでいる。
セフィーロも変わった。かつてのような、『柱』の意志しだいで全てが可能となる世界と違い、より全てが複雑になった。問題が起こっても、今は自分たちで解決しなければならない。でも、最も強い意志を持った者が、自分の心と体を殺さなくてもよくなった、それだけで素晴らしいことだと思うのだ。人は、「国」のような曖昧なものだけを愛するようにはできていない。そこに愛する人がいるから、その人たちが住む国を愛し、護ろうとするのだ。国だけを愛し、国よりも人を愛する事を許されないなんて、絶対に間違っていると思う。

 それなのに三年前、風たちは『柱システム』に従い、『柱』を、この手で殺した。その感触ははっきりと両手に残っている。エメロード姫が例えそれを心から望んだとしても、その事実は変わらず、いまだに風は何度も悪夢にうなされる。
「……風ちゃん?」
ふと気づけば、光が心配そうな顔で、風を見上げていた。風はにっこりと笑って首を振った。こんなことを話したら、光が傷つくだけだ。その上、過ぎ去ったことを悔やんでも、誰にもどうすることもできないのだ。「死んだ者は、生き返らない」のだから。だから、過去ではなくて今だけを言葉にした。

「光さん。私達は魔法は使えますが、魔神を失った今、もう魔法騎士ではありません。それでも、私たちは一生懸命、この国々のためにできることがしたいと思います。セフィーロを愛して、みなで幸せになること。エメロード姫ができなかったことをやること。それが、私たちにできる唯一のことですから」
「……うん、そうだね」
頷いた光は、風のいいたかったことをきっと分かっているのだろう。そんな時の光の横顔はいつも凛として強く、風はハッと魅入られる思いがする。

「なにやってるの、光、風! 準備できたわよ!」
かいがいしく働いていた海が、二人を見やる。ザズが、人数分の紅茶をお菓子を持ってきてくれた。周囲の注目を浴びたクレフが、紅茶が満たされたティーカップを少し差し上げた。
「この『美しい』国に」
「乾杯!」
全てが美しい、確かに思っていたのだ、その時は。

8 につづく

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