忍者ブログ

レイアース二次小説置き場 (Last One)

「魔法騎士レイアース」クレフ中心の長編小説を置いてます。

2020.01.24
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2012.10.08
どんどんこの人のことが好きになりそうで、風は困ってしまう。

「つづきはこちら」からどうぞ。

――

水平線が、空のピンクと、海のブルーに染まり溶けあっていく。天頂の辺りには、すでに群青色の夜の色が忍び寄ってきている。セフィーロの人々はその景色にあまり見とれることなく談笑しているが、他国の客人たちは、映画を見ているようにその大自然に釘づけになっている。この景色を毎日当たり前のように見られるなんて、セフィーロの人びとは本当に幸せだと思う。風たちは月に1・2回はセフィーロを訪れているが、それでもこの景色の美しさは、何度見ても新鮮な驚きを与えてくれる。

隣の椅子に座っているフェリオに、その美しさを伝えようとして振り返る。
「本当にうまいな、ウミのケーキは」
フェリオは夕焼けに背を向けて、ケーキを口いっぱいに頬張っていた。
「フェリオ……」
「ん? どうかしたか?」
「……。なんでもありませんわ。本当に海さんは料理がお上手ですのね」
なんだかおかしくなって、くすくすと笑いだしてしまう。

紅茶を一口飲んだフェリオは、ようやく周囲を見わたした。
「本当に広くなったよな、セフィーロは。姉上の時代と比べても比較にならないくらいだ」
「全然、地形も前と違いますわね」
フェリオはうなずいた。今のセフィーロは、中央に巨大な海があり、その更に中央に城がある。三年前、セフィーロの土地が次々と崩壊していた時、最後の避難場所として導師クレフを中心に創り上げたものだ。ただしその城にはまだ大部分の住人が残っていて、クレフたち中心人物は全員住んでいる。彼ら彼女らが城を離れないのは、まだ決めることが多く集まる機会も多々あるため、一緒に暮らした方が何かと便利なためだ。一方で住人たちは三年前のセフィーロ崩壊の恐怖がまだ頭から離れず、城が一番安全だと考えているそうだ。

城を抱え込んだ海の周囲には、巨大な森が広がっている。森の奥には山脈が連なり、空中には島が浮かび、島からは火山や衛星のようなものまで見えるらしい。地平線がほぼ一直線に見えることからも、セフィーロの大きさが推し量れるというものだ。実際、今のセフィーロは四つの国のなかで桁外れの、広大な土地を持っていた。

「まさか。城を出ておひとりで探検などされてないですわね?」
「おぉ? よく分かったな。もう、ずいぶん見て回ったぞ」
心配して言ったつもりなのに逆に嬉しそうに言われ、風は少しの間言葉を失った。海だったら盛大に突っ込みを入れるところだ。

「危なくないんですの? 魔物はいないんですか」
「いや、けっこういる。場所によっては姉上が祈れなくなったころと、そう変わらないな」
あっさりとフェリオは首を振った。
「……この国の人々が、まだ恐怖心を持っているということですね」
「ああ。でも、しかたないさ。まだ、国が滅びかけてから三年しか経ってないんだ。それに『柱制度』も崩壊して、全部イチから始めるところなんだ、怖くて当たり前だろ? 魔物も含めて、今のセフィーロだ。一時は無くなると覚悟を決めたこの国が、今こうやって在るだけでも俺は『幸せ』だと思う」
「……フェリオ。ごめんなさい」
フェリオが言うことが正しいと思った。月に2度程度訪れる風の身にはセフィーロは平和そのもので、「もう三年も経ったのか」と思える。しかしフェリオや、この国に定住している人々から見れば、「まだ三年」という意識なのだろう。

フェリオは、意外そうな顔をした。
「なんで謝るんだ? 謝るようなこと言ってないだろ?」
風はかすかに首を振って、フェリオを見やった。
「おけがは?」
「だいじょうぶだ。心配するな」
ようやく、フェリオは自分が心配されていると気づいたらしい。にっこりと笑われると、怒るつもりだった気持ちがほぐれてしまい、風は何といったらいいのか分からなくなってしまう。フェリオは椅子の上に器用に胡坐を掻いて、平和な日没を見た。袖からむき出しの二の腕からは、よく見れば包帯が覗いている。肩を怪我しているらしい。

「姉上の時代みたいに、予定調和的なことはまず起こらないな。予想外のことばっかり起きるし。でも、それが面白いんだ。世界をこの目で見て知って、それを伝えて行くこと。それが今残された『王子』として、俺がこの国にできることだと思ってる」
「……『癒しの風』」
そっとフェリオの肩に指先を触れて、魔法を唱える。これまで多くの人を癒してきた魔法は、唱える側にもあたたかな気持ちを運んできてくれる。
「ありがとう」
お返しのように首筋に添えられた大きな掌に、風は赤面した。

フェリオは、着ている服こそ変わったが、初めて会ったときと変わらない心を持っている。ただ隣に座って話しているだけなのに、胸に爽やかな風が吹きこんだような気持ちになる。どんどんこの人のことが好きになりそうで、風は困ってしまう。あわてて会話を切り替えた。
「フェリオ。ずっと不思議だったことがあるんですが」
「なんだ?」
「あなたはどうして『王子』と呼ばれているのですか? 『柱』を王・女王として中心に据えるなら、あなたは『弟君』と呼ばれるべきでしょう。でもあなたは、エメロード姫の御子ではないのに『王子』と呼ばれています」
フェリオは頭を掻いた。

「そういえば、言ってなかったか。姉上の前の『柱』は、俺の母上だったんだ。姉上が『姫』、俺が『王子』と呼ばれるのは、その名残だ」
「そうだったのですか?」
思わず声が大きくなってしまう。そういえば、エメロード姫の前に『柱』がいるのは、考えてみれば当然のことではあるのだ。フェリオは特に気にしてもいない様子で笑った。
「まあ、知っての通り『柱』に血筋は関係ないから、偶然なんだけどな」
「では、ずっと永い間、間近で『柱』を見ておられたんですね」
「ああ。だから、姉上が亡くなった時、俺は『柱』は残酷な仕組みだと心から思った」
フェリオは苦い笑みを浮かべた。

「次の『柱』候補は、姉上が亡くなった理由を知るべきだ。結果的にはそれが原因で、候補が『柱』になることを拒んだとしても―― そう主張したりもした。生意気なことを言ったもんだ。結果的に、そうなればセフィーロは滅びる。俺にはそれを受け入れる覚悟はなかったし、だからと言って別の方法を思いつきもしなかったくせに」
「フェリオ……」
「あの時の俺は、一部分のセフィーロを知っただけで、世界を分かった気になってた。でも、俺は何もわかっちゃいなかった、って今になると思うんだ。だから、『柱制度』に変わる仕組みがあるなんて夢にも思わなかった。オートザムやファーレン、チゼータは俺たちと全く違う制度で国を守っている。俺はいろんな国へ行って、もっと自由で広い考え方ができる男になりたいんだ」
「素敵ですわ」

「柱」をめぐって、人一倍辛い思いをしてきたはずだ。もしかして風よりもよっぽど、苦しんできたのかもしれない。それなのに、その苦しさを全く表に出さず、前へ前へと行動に移すフェリオのことが好きだった。どんどん、好きになってもかまわないではないか。風は微笑んだ。

フェリオは、光と共に近くにいたランティスを見やった。
「この国には、ランティスもラファーガもいる。もし万一のことが起こっても、二人が戦ってくれるさ」
「ランティスは信用ならん」
ランティスが何かを答える前に、険しい男の声が割って入った。フェリオと風が振り返ると、そこには鎧姿のラファーガとカルディナがいた。
「かつてこの男は、エメロード姫付の親衛隊長でありながら、誰にも事情を告げず責務を捨ててこの国を出奔したのだ。そしてあの内乱時にも戻らなかった。それが裏切りでなくて、何だと言うのだ」
「ラファーガ、そんな……」
立ち上がった光を、ランティスが制した。
「……否定はしない」
二人の男の間に、弓をキリリと引いたような緊張感が張りつめる。その場の視線が、二人に集まった。
「ちょちょ、ラファーガ。もう済んだ話やんか」
背後からカルディナがラファーガの腕を引っ張ったが、びくともしない。ラファーガは大股で、ランティスの傍に歩み寄った。ランティスが立ち上がる。

「『事情』なら、私が知っている」
突然、大きくはないが明瞭な声が、その場によく通った。一同は、椅子に腰かけ、ティーカップを口に運んでいたクレフを見た。隣にいたプレセアは気づかわしげに、クレフとランティス、ラファーガを見守っている。クレフはティーカップをテーブルの上に置くと、組んだ膝の上に両手を組み、ランティスを見やった。
「ランティスに『柱制度』への疑念を最初に告げたのは私だ。ランティスは、『柱制度』に変わる仕組みを探すために、他国へと旅立った。エメロード姫と兄を救うために」
「導師クレフ、それは……」
「違わないはずだ」
師弟の、二組の青い瞳が交錯する。先に視線を伏せたのはランティスだった。
「結局、俺は間に合わなかった。『柱制度』の崩壊を望んだが、その後の世界がどうなるのか、思い描くことはできなかった」

無言のまま、厳しい視線をランティスに向けているラファーガに、クレフが視線を移す。
「ランティスは、私が最も信頼する教え子の一人だ。ラファーガ、私を信頼してくれるのなら、ランティスのことも信じてはくれまいか」
「あなたのことは無論、信じているが……」
渋い表情のラファーガに、クレフは少し眉をひそめた。
「私は、お前のことを買っているのだ。そのお前に教え子が悪しざまに言われるのは、師である私も耳が痛い」
「そのようなつもりは……も、申し訳ありません」
ラファーガが慌てて謝った。ランティスだけを攻撃したつもりが、クレフを不快にさせていたとは思わなかったに違いない。しかしその後、クレフが珍しくも吹きだしたのを見て、冗談だったと気づく。

「導師クレフ!」
「お前たちは、あの厳しい戦いを乗り越えた大切な仲間なのだ。互いを大切にするように、な」
「……分かりました。二度と、あのようなこと口にはしません」
ラファーガは一度クレフに向かって頭を下げると、そのまま踵を返した。カルディナがため息をつく。

「堪忍な。あの人、真面目やから。義務とか責任とか、めっちゃ気にすんねん。でも、あの人は約束は守る人や。二度と言わんっていうたら、ほんとに二度と言わんから」
「……わかっている。それに、ラファーガの言葉は正し……っ?」
途中で、ランティスはいきなり言葉を切った。後ろから歩いてきたクレフが、その杖の先でランティスの頭を打ったからだ。軽く小突いた程度だろうが、あの大きさだけに、ゴツン、とけっこう大きな音がした。見ていたらしい海が、一瞬おどろいた顔をした後、慌てて俯いた。ウミ! とアスコットに言われているが、その肩がふるえている。どうやら、笑っているらしかった。そういえば、風が知る限り、クレフの杖で叩かれたのは初対面で彼を「子供」呼ばわりした海だけだ。

剣士であるランティスが、普通のスピードの一撃を本来避けられないはずがない。しかし結果的にまともに当たったのは、まさか師に叩かれるとは予想していなかったからだろう。振り返ったランティスは、唖然……というよりもぽかんとしていた。
「お前がいけないのだ、ランティス。もう少し、自分の言葉で自分を語れるようになれ」
要は無口すぎるから誤解されるのだと言いたいらしい。ただし、本気で怒っているのではないのは、クレフの目を見れば分かる。
「だ、だいじょうぶ? けっこう大きな音がしたけど……」
光が首をかしげて、ランティスの後頭部に手をやる。ランティスは、所在なさそうに苦笑した。無表情だと、その巨体もあって怖い印象を持たれがちだが、微笑むとその青い目は驚くほど優しく見える。光が、がまんできなくなったように、あはは、と不意に笑いだした。その場の雰囲気が、一気に和らいだ。

「ランティスを小突けるのは導師クレフくらいだな……」
フェリオは少しポイントがずれたところで感心している。特にクレフとランティスの二人が一緒にいるところは見ないが、改めて見ると二人の距離は、風たち魔法騎士とクレフの関係とは明らかに違っているようだ。長い付き合いの中で、互いの気心はしれている者たちの気やすさが見え隠れする。

「それで……行く国はもう決めておいでですかな? セフィーロの王子」
和やかになったタイミングで、さりげなくチャンアンが話題を戻した。
「いいえ。比較的情報量の多いオートザム以外の国のほうがいいと思っていますが……」
「じゃあ、ファーレンに来ると良い」
アスカが、有無を言わさない口調で断言した。
「いいのか?」
「いいも何も、ファーレンは客人を大切にする国柄じゃ。歓迎するぞ」
「それはありがたい」
「私も行きます」
アスカとフェリオが驚いた顔で、風を振り返った。
「風……。でも、」
「あなたのことですから、危険なことにも首を突っ込んでしまいますでしょう? 怪我をされたら、誰が治すのですか」
「……風しかいないな」
ありがとう。そう微笑まれ、風はわずかに頬が赤くなるのを感じる。いつもセフィーロでは同じ城で暮らしているのに、二人で旅をするとなると、なんだか特別な気がしてくる。なんだか今、とても大胆なことを言ってしまったのではないか。

「それなら、チゼータにも誰か来たらどうだ?」
二人で仲良く椅子を並べて座っていたタータと、姉のタトラが揃ってセフィーロの一同を見た。はい! と張り切って光が手を上げる。
「わたし、行ってみたいなぁ! アラビアンナイトの国!」
「あらびあんないと?」
タータとタトラはそろって首をかしげている。

「一人じゃ危ないわ、ヒカル」
クレフの後ろにいたプレセアが声をあげる。
「ヒカル」
ランティスが後ろから光に声をかける。
「えっ、何? ランティス」
「……」
ランティスは無言のまま、フェリオ、ラファーガ、クレフを順番に見た。ランティスの次の言葉を図りかねたとき、イーグルの楽しげな声が頭の中に響いた。

「ランティスは困っているんですよ。ヒカルと一緒に行きたいものの、今さっき、セフィーロを守るようフェリオに頼まれたばかりですし、ラファーガとも和解できた矢先です。黙っていたら分からないと導師クレフに言われたばかりですし、この状況をどう言葉で伝えるか、考えているんです。ですよね? ランティス」
「……イーグル」
「すみません、でも、待っていたら日が暮れてしまいそうですし。僕も寒くなってきました」
「かまわん、ヒカルとチゼータへ行け。いざとなればラファーガと私が守ればいい」
やれやれそんなことか、と言いたそうな様子で、クレフが助け舟を出した。その後ろで、ジェオとザズがせっせと毛布をイーグルに掛けている。タトラが進み出た。

「よろしければ、あなたもご一緒に、と思っていたのですよ、導師クレフ。チゼータには古文書が数多くありますが、言葉が古くて読むことができません。あなたなら、読み解くことができるかもしれないと、本国でも希望をもっています」
ふむ、とクレフは考えるそぶりを見せた。しかし、すぐに首を横に振った。風には、その素振りがまるでクレフが自問自答していたように見えた。
「興味深いが、私は今は、セフィーロを離れられん」
「そうですか。……残念ですが、わかりました。またの機会に」
言い募っても意味がないことは分かっているのだろう。タトラはそれ以上薦めはしなかった。
「良ければ、写本を送ってくれるか? 判読できるか試してみよう」
「本当ですか? 有難うございます」
タトラは優雅に頭を下げた。

「ね、海ちゃん。一緒に行かない?」
光が、無邪気に海に声をかけた。アスコットが待っていたように進み出る。
「そうだよ、あの、よかったら……僕も一緒に」
「海ちゃん?」
ぼうっとしている様子の海に、光が声をかけた。海は、すぐに我に返り、光とアスコットを見て照れ笑いした。
「なんでもないの。……ごめんね、あたし、今回はセフィーロに残るわ」
「……。なんかあった? 海ちゃん。具合悪いの?」
「いいえ! 何でもないの。何となく、残りたい気分なのよ」
「海ちゃん……」
「お土産、いっぱい持って帰りますわね」
風は、にっこり笑って二人の会話を遮った。海は決して、行きたいのに行けないのではなく、自分の意志で「残りたい」のだと気づいたからだ。そして、ぼうっとしている間、海はクレフを見ていた。深く考えると、胸が苦しくなってきそうだった。


※エメロードとフェリオの母親が先代の『柱』だった、というエピソードは捏造です。でも考えてみれば、柱は世襲制じゃないのに、なんでフェリオが「王子」なのかは普通に謎です。

9. につづく

拍手[27回]

PR
Post your Comment
Name
Title
Mail
URL
Select Color
Comment
pass  emoji Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
  BackHOME : Next 
ブログ内検索
忍者アナライズ

レイアース二次小説置き場 (Last One) wrote all articles.
Powered by Ninja.blog / TemplateDesign by TMP  

忍者ブログ[PR]